<中日4-9西武>◇10日◇小牧

 連弾で開幕右翼へ逆襲だ!

 2軍から昇格した中日野本圭外野手(25)が、西武戦でオープン戦初出場。第1打席から2打席連続本塁打を放って強烈にアピールした。最激戦区の開幕右翼争いはドラフト5位大島洋平外野手(24=日本生命)がリードしていたが、昨年のドラフト1位が大逆襲を開始した。駒大の先輩、後輩が1つのイスを巡って繰り広げる“仁義なき争い”から目が離せない。

 最大瞬間風速13・2メートル、小牧に吹き荒れた寒風が野本を後押ししてくれた。2回、同級生で大学時代から意識している西武先発岸のストレートをとらえた。左翼に上がった打球は強風にも乗ってスタンド・イン。8日に1軍に招集されたばかりの男が今季オープン戦初打席で最高の結果を出した。

 さらに4回には、その強風を切り裂いた。カウント1-3からの内角直球を完ぺきにとらえると、打球は弾丸ライナーで右翼ポール際のスタンドに突き刺さった。「もちろん、きょうは結果を出さないといけないと思っていました」。昇格即2打席連続本塁打。逆転での開幕スタメンを目指す野本にとってこれ以上ない痛烈デモだった。

 「きょうはさすがに緊張していました。でも、僕は持ち味の柔らかさを出していかないといけないので打席ではリラックスしようと心がけました」。絶対に結果を出さなければならない試合だった。昨年、新人ながら開幕1軍を勝ち取った野本は今季も有力なレギュラー候補。だが、沖縄キャンプ終盤、2軍落ちを言い渡された。落合監督の無言の叱咤(しった)。笘篠外野守備走塁コーチによれば「キャンプでは打撃に力を入れていたけど、レギュラーになるには何が自分に欠けているのか。それを考えろということだと思います」。課題の守備面が降格理由だったという。

 そんな野本の代わりに外野手争いをリードしたのは新人の大島と松井佑だった。特に駒大の1年後輩の大島は高い打率に加え、守備、走塁でもアピールして開幕右翼の最有力候補になっていた。2軍教育リーグに出場していた野本がようやく1軍に呼び戻されたのは2日前。この日は打撃での2打席連発とともに、課題の守備で安定感を見せたことも大きかった。

 駒大時代は大島が1番、野本が3番打者としてチームを引っ張っていた。互いに実力は知っている。そして、グラウンド上で先輩後輩など存在しないことも-。“仁義なき開幕右翼争い”の決着に残されているのはあと9試合。「これからも結果を出したい」。小牧球場を後にする野本は早くも気持ちを次の戦場へと向けていた。【鈴木忠平】

 [2010年3月11日10時27分

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