<日本ハム6-1中日>◇16日◇鎌ケ谷

 グリフィー弾で開幕スタメンが見えた。日本ハム中田翔内野手(20)が、オープン戦最終戦に7番左翼で先発出場し、2打席連続本塁打で締めた。特に2本目(2号)の左翼への場外本塁打は、97年にケン・グリフィー外野手(40=マリナーズ)が同球場でのフリー打撃で放った場外本塁打に負けない推定140メートルだった。3年目で初の開幕1軍は決定的で、開幕スタメンをアピールする最高の特大アーチとなった。

 オープン戦で1本もなかった本塁打が、最後の最後に出た。しかも2打席連続。忘れていた笑顔が中田に戻った。「試合の中であれこれ考えるのは邪魔になると思った。一切考えなかった」と、自然体で臨んだことで迷いが消えた。本来のパワーがよみがえり、初の開幕1軍どころか、スタメンをも予感させる2発につながった。

 5回の第2打席。中日バルデスの初球、126キロスライダーを左中間スタンドへ打ち込んだ。2月23日の練習試合横浜戦以来となる、今季オープン戦初アーチだったが、これは“衝撃”の序章にすぎなかった。

 続く6回だ。同じくバルデスの136キロカットボールを強振すると、打球は左翼席後方の防護ネット(高さ12メートル)を軽々と越え、外周道路まで到達した。鎌ケ谷では、97年11月に野球教室で訪れたグリフィーがフリー打撃のデモンストレーションで放っているが、数少ない場外弾だった。

 メジャー通算630本塁打をマークするグリフィーの右翼場外弾の着地点には記念碑が建てられている。球団関係者は「同じくらい飛んでいるんじゃないか。日本人選手の試合でのネット越えは記憶にない」と驚く推定140メートル弾。中田は「気持ち的な余裕もあって打席に立てたと思うし、完ぺきだった」と納得の表情で振り返った。

 プロ2年目の昨季はイースタン・リーグで30本塁打と95打点の2冠に輝いた。ともにリーグ記録で、本塁打は従来の記録を3本も上回った。今年こそ開幕1軍を目指し、キャンプではフォームの大改造を行った。取材で訪れた元中日の立浪和義氏から「タイミングが遅い」と助言されると「言っていることは分かっても、どうしていいか分からなかった」と、福良ヘッド兼打撃コーチに相談。同コーチへの相談は、3年目で初めてだった。さらに形状の違うバットを糸井に借りて試すなど、試行錯誤を繰り返した。

 毎年3月になると調子を落とし、シーズンが始まるころには2軍落ち。今年もオープン戦の中盤まで打率トップを走っていたが、やはり快音が止まり、一時は教育リーグにも出場した。「開幕1軍というのは、夢…とまではいかないけど、それくらい遠いものに感じていました」。これまでの苦悩を振り返り、少しだけホッとした表情を見せた。

 「開幕1軍」というハードルは越えた。さらに20日の開幕戦(札幌ドーム)は左腕のソフトバンク杉内が見込まれ、右打者重視となれば先発起用も見えてくる。梨田監督も「今日だけで判断はできないけど、打ったのは事実。何かをつかんでくれたら」と今後への期待を寄せた。それでも中田は「これで余裕かまして足をすくわれないように。1日でも長く(1軍に)いたいです」と戒めた。笑顔はいつの間にか消えていた。【本間翼】

 [2010年3月17日8時25分

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