巨人木村拓也内野守備走塁コーチ(37)が2日の広島1回戦(マツダ)の試合前練習中に倒れ、広島市内の病院でくも膜下出血と診断された。同コーチは午後5時40分ごろ、グラウンドでシートノック中に意識もうろうの状態に陥り、救急車で市内の病院に搬送された。重体とみられる。昨季限りで現役を引退し、指導者として新たなスタートを切ったばかり。巨人原監督らは回復を祈りながら気丈に試合に臨み、5-4で勝利した。

 突然の出来事にマツダスタジアムは騒然となった。木村拓コーチは午後5時40分ごろ、試合直前のシートノック中に突然、ひざから崩れるように前のめりにホームベース付近で倒れた。一番近くにいた捕手の鶴岡が、同コーチをあおむけにして抱き起こしたが、すでに意識はもうろうとした状態。守備練習をしていた選手たち、そしてベンチにいた原監督が血相を変えて周囲に集まった。

 その場で医師による人工呼吸や心臓マッサージなど応急措置が施された。数分後に到着した救急隊員により、救急車で広島市内の病院に搬送され「くも膜下出血」と診断された。試合前練習中は普段と変わらない様子に見えたが、チーム関係者には「頭痛がする」と漏らしていたという。

 木村拓コーチにとって広島は「第2の故郷」でもある。宮崎出身だが現役時代は主に広島でプレー。06年の巨人移籍後も、家族を広島に残し単身赴任の形を取ってきた。移動ゲームとなったこの日もチームよりも早い時間に広島へ移動し、春休み中の子供たちに会ってから球場入りしていた。最も楽しみにしている広島遠征中に、まさかの悲劇に襲われた。

 第2の野球人生が始まったばかりだった。現役時代は内外野どこでも守れるユーティリティープレーヤーとして活躍。昨年9月に出場捕手の緊急負傷退場により10年ぶりに捕手として出場した試合は記憶に新しい。だが、1軍に内野守備コーチが不在だったチーム事情もあり、日本シリーズ終了後に惜しまれながら現役を退いた。今年の春季キャンプでは守備に課題のある2年目の大田の守備練習にマンツーマンで付き合うなど、指導者としての第1歩を順調に踏み出していた。

 木村拓コーチが救急車で搬送された時は、すでに試合開始が10分後に迫っていた。突然の悲劇に、選手たちは明らかに動揺していた。原監督はいったん選手をロッカールームへ戻し、全員で手をつないで「我々には無事を祈ることしかできない。だから祈ろう。でも、この手をほどいた瞬間、試合に集中して戦おう」と声をかけた。試合は、予定より3分遅れの午後6時3分に始まり、巨人は5-4で逆転勝ちした。

 木村拓コーチは予断を許さない状況が続いており、試合後の巨人の選手たちは勝利にも喜びの声はなかった。主将の阿部は「悲しい。すごいショックで言葉にならない」と沈痛な表情を浮かべ「本人は必死に闘っている。僕らは元気になって帰ってくることを信じて、明日からも試合で頑張りたい」と声を絞り出した。

 [2010年4月3日8時11分

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