<広島5-6巨人>◇3日◇マツダスタジアム

 木村拓コーチ頑張れ!

 巨人が3日の広島戦(マツダ)を総力戦でものにし、今季初の3連勝で貯金を2とした。先発に転向し今季初登板の山口が4回途中4失点でKOされる苦しい展開も、チーム一丸となって反撃。途中出場のルーキー長野久義外野手(25)の2安打2得点の活躍などで逆転に成功し、6-5で競り勝った。前日2日に木村拓也内野守備走塁コーチ(37)がくも膜下出血で倒れて緊急入院。依然として意識不明の危険な状態が続く中、選手たちは気丈にプレーし、病と闘う木村拓コーチにエールを送った。

 巨人が総力戦でアクシデントを乗り越えた。2点リードの9回に守護神クルーンが右手を負傷して降板。急きょマウンドに上がった小林が広島の反撃を1点に食い止め、逃げ切った。薄氷の勝利も、原監督は「お互いが力を出して、カバーし合ってくれましたね」と、満足げな表情で振り返った。3連勝で2カード連続の勝ち越しを決めた。

 先発山口が4回途中4失点でKOされ、主導権を握られたまま終盤を迎えた。この嫌な流れを、途中出場の新人長野がガラリと変えた。1点を追う7回に代打で出場。中越えに二塁打を放って小笠原の適時打で同点のホームを踏んだ。9回の2打席目も、先頭で中前打で出塁し、すぐさま二盗を決めて決勝のホームを陥れた。

 定位置を争うライバル松本が好調。限られた出番でチームを救った長野は「上位につなごうと、とにかく塁に出ることだけを考えました。(松本の存在は)刺激にはなっています」と初体験のヒーローインタビューに照れながら答えた。原監督も「沈滞していたところで彼が入り風向きが変わった。素晴らしい2打席でした」と称賛した。山口の後を継いだリリーフ陣も踏ん張った。久保、越智、豊田、金刃が4回途中から8回までを無失点で抑えた。原監督は「それがチーム。それぞれがカバーしたことで試合を進めることができた」と目を細めた。

 チームの誰もが木村拓コーチの容体を案じており、本心は気が気ではないはず。しかし、主将の阿部が「僕らは元気に帰ってくることを信じ、グラウンドでは試合に集中しないといけない」と話すように、白星を積み重ねていくことが、病と闘うコーチへの何よりのエールになると信じて試合に臨んでいる。

 原監督も思いは同じだ。昨季を振り返る時、必ず木村拓コーチが急造捕手を務めた昨年9月4日のヤクルト戦を挙げ「監督をしていて最も感動した試合だった。本当にタクに助けられた」とことあるごとに言う。精神的なショックは計り知れないが「僕らは祈るしかない」と気丈に振る舞い、グラウンドではチームが勝つための采配に集中している。勝利のハイタッチを終えてベンチ裏へと引きあげてきた原監督は「これからもベンチにいる全員の力をどう使うかを頭に置いてやっていきます」と、表情を引き締めた。【広瀬雷太】。

 [2010年4月4日9時10分

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