<巨人6-5日本ハム>◇5日◇東京ドーム

 

 一塁へ走りだした巨人高橋由伸外野手(35)は両手を大きく広げた。2点を追う7回無死一、二塁、日本ハム林から右中間へ7号逆転3ランを放った。前夜から2番に座る。終盤で同点の走者が出た直後。「正直、送ることも考えた」が、犠打の指示はなし。原監督は「他の選択肢はありませんでした」。指揮官の決断に迷いは消えた。初球、外の直球を完ぺきにとらえ125メートル特大弾。“1粒300メートル”のグリコポーズに喜びがにじみ出た。

 逆転アーチを放つと、ベンチでじっとバットを見詰めた。「どこでとらえたのかなと思って」。芯に残る跡は2つ。1-4の5回には糸数から2ランを放った。2本目同様、右中間へ完ぺきな130メートル弾。4日から2試合3本の固め打ち。2試合連続アーチは実に08年9月5、6日のヤクルト戦以来だった。昨季は腰痛で2軍調整が続いた。「朝早く(2軍の)グラウンドに行くのとは違いますね」と笑みがこぼれた。

 プロ13年目にして、未知なる戦いに挑んでいる。09年9月に腰を手術。今季はコンディション維持が最大のテーマと言える。開幕から1カ月たった4月末、「どうやっていけばいいのか、自分でも分かっていないところはある。オープン戦までと比べて今の負担は比べものにならない。緊張感が全然、違う」とブランクに直面した。それでも「いくら走っても試合に出る体力はつかない。試合に出続ける中で体力を戻していくしかない」と決意。日々のケアはもちろん、スタメンでない日も練習メニューは変わらない。開幕から2カ月以上たち「目に見えて良くなることはないけど、下がっていることもない。良い方向に行っているのかな」と手応えを口にした。

 打率3割まで、もう少し。原監督は「まだ来るね。良い感じなのはうれしいが、そんなもんじゃない」と断言した。この日の2本のアーチは「ヨシノブ完全復活」の序章にすぎないのかもしれない。【古川真弥】

 [2010年6月6日7時31分

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