<中日3-0巨人>◇4日◇ナゴヤドーム

 オヤジパワーに限界なし。中日山本昌投手(45)が巨人打線を6安打完封し、45歳0カ月でのプロ野球史上最年長完封記録を樹立した。50年若林(毎日)の42歳8カ月を60年ぶりに大幅更新。45歳以上のシーズンで年間4勝もプロ初の快挙。大ベテランの記録的1勝でチームはナゴヤドームで巨人戦8連勝を飾り、首位阪神とのゲーム差を0・5に縮めた。

 アウトを重ねるたびに、スタンドからの拍手が大きくなった。山本昌が自身もビックリの完封劇。111球目。9回2死から阿部を二飛に打ち取ると、少し恥ずかしそうな表情を浮かべ、大事そうにウイニングボールを受け取った。

 「すごいですね。ずっとキツかった。8回から代わるのかなと思っていたけど、そうチャンスはないしね。最後の完封かもしれないと思って楽しんで投げた」。60年ぶりの記録更新を知らされると「シーラカンスばりだね。化石だよ」と笑い飛ばした。

 8月に1軍に上がり、この日で5試合目の登板。これまでは、引退と隣り合わせのプレッシャーを感じながらのマウンドだったが、この日は違った。「3連勝したことで、心に余裕ができた」。3回には2死二、三塁のピンチで小笠原を外角へのボール球で空振り三振。優勝争いの中、負けられない試合に変わりなかったが「きょうは立ち上がりも冷静だったし、少しは(自分)らしかったんじゃないかな」と、最後まで自分を見失わなかった。

 3日、かつてチームメートだった4歳下の阪神矢野が今季限りの引退を発表。すぐに電話をかけた。「お疲れさま」。矢野が中日に入団した91年には、キャンプで同部屋だった。バッテリーを組み、何度も勝利の喜びを分かち合った。「いろいろと仲良くしたからね。あのころを思い出すよ。阪神にいってからはよくやられたけど、これからは応援してくれるでしょう。引退試合があれば立ち会いたいね」。そしてこの日は「寂しいけど、彼の分まで頑張りたい」という思いを胸に、必死に腕を振った。

 落合監督も「きょうはマサ。1人で投げたんだから、こないだとは違う。1点取られたら交代だったけどな」とニンマリ。「いっぱい(記事を)書いてやって。全部マサで埋めろ」と、最後まで1人で投げ抜いた大ベテランに目を細めた。

 この日の勝利で首位阪神も、もう目の前。「(この年で)投げてていいのかって感じなんだけど、勝ちがつくうちは頑張りたい。しっかりした成績で優勝に貢献したいね」。山本昌は歓喜の瞬間まで立ち止まらない。【福岡吉央】

 [2010年9月5日8時25分

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