<巨人5-1広島>◇12日◇東京ドーム

 巨人が頼れるリードオフマンの大暴れで3連勝した。坂本勇人内野手(21)が初回に今季7本目となる先頭打者弾。巨人では96年松井(現エンゼルス)以来となる22歳以下の30本塁打到達に王手をかける1発でチームを勢いづけた。6回2死満塁のチャンスでは右翼線適時二塁打を放って試合を決定づける貴重な2点を追加。2安打3打点の活躍で、ともに勝った首位中日、2位阪神とのゲーム差をキープした。

 背筋をピンと立てた独特の構えに、緊張感が漂う。坂本は、初回から集中力を極限まで高めて打席に入った。3球目。得意とする内角球を、迷いなく振り抜いた。「甘く来たら思い切りいこうと。少し詰まったので入るとは思わなかった」。全力疾走しながら見上げた打球は、手応え以上に伸びて、左中間スタンドへ吸い込まれた。

 1番打者のひと振りの重みを知っている。“明日なき戦い”が続くチームにとって、のどから手が出るほど欲しい先制点。今季7本の先頭打者弾のうち5本をここ1カ月の間に量産している坂本は「1打席目から集中して打席に入れている」と胸を張った。

 走者を置いた場面でも勝負強かった。1点を返された直後の6回。投手の山口が左前打を放ち、2死満塁で打席が回ってきた。「山口さんがつないでくれたし何とかしたかった」。外角低めの球に食らい付いた。右翼線をライナーで襲う適時二塁打で貴重な2点を追加した。

 夏場に入り、打撃の調子を落としただけでなく、粗い守備も目立つようになった。共通していたのは下半身の粘りのなさ。打率が3割を切った8月下旬、原監督とのマンツーマン指導で、厳しい言葉を掛けられた。「野球が下手になっている!

 打撃も守りもハムストリング(太もも=下半身)を使わないといけない。フルイニング出場にこだわるのもいいが、そこがおろそかになっているようなら、おれは容赦なくお前を交代させる」。イスに座ったままのスローイング練習などを行い、下半身の重要性を再確認した。

 初回のアーチが少し詰まったのも、6回に苦手の外角球に対応できたのも、上体ではなく、下半身を使いギリギリまで球を引きつけた証拠。原監督は「ヒットゾーンが広がっている。いい兆候だと思う」と、うなずいた。9月に放った10安打のうち、8本がセンターから右方向という結果も偶然ではない。坂本も「いい形で打てている。自分は忘れやすいので(原監督の教えを)継続してやっていきたい」と助言に感謝した。

 巨人の1番打者では史上初めて80打点を突破(07年の高橋は1番で74打点)した。「誰もあきらめてはいない。集中して戦っていきたい」。超攻撃的なリードオフマンが、逆転Vへの扉をこじ開ける。【広瀬雷太】

 [2010年9月13日8時59分

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