<横浜2-0阪神>◇7日◇横浜

 住生活グループへの球団売却交渉が進んでいる横浜が、今季最終戦で阪神に快勝した。1点リードの7回、高卒ルーキー筒香嘉智内野手(18)がプロ初安打となる1号ソロで貴重な1点を追加し、チーム通算3500勝に花を添えた。試合後のセレモニーでは、加地隆雄球団社長は「必ずやこの地で優勝を」と、横浜残留への強い思いを満員のファンに訴えた。

 加地球団社長の声は、はっきりと震えていた。「横浜の地を離れたくありません」。シーズン終了のセレモニーでマイクを握ると、横浜への愛をこれでもかと訴えた。「横浜の底力を示そうではありませんか」。3年連続の最下位に沈む一方、シーズン最終盤には住生活グループへの身売り問題が持ち上がった。新潟移転もうわさされたが、社長の思いは揺るがなかった。

 未来の「横浜」を担う男が、最後の最後で期待に応えた。5番に座ったルーキーの筒香だ。地元・横浜高出身。昨年10月、就任したばかりの加地社長が「未来の4番」との夢を持ち、ドラフト1位で指名した。

 7回の第3打席、阪神久保田の150キロ速球を思い切りひっぱたいた。大歓声に乗った打球は放物線を描き、右中間席に飛び込んだ。推定飛距離130メートル。高校通算69発のスラッガーが、プロ3試合、10打席目にして放った初安打。「やっと打てました。うれしいです」。あどけなさが残る顔をくしゃくしゃにして、ベンチとファンの祝福に応えた。

 阪神が誇るセットアッパーが投じた初球を、迷いなく振った。プロ初出場の5日は第1、第2打席で初球の変化球を打ち損じたが、その後も臆(おく)することはなかった。「昨日までは結果を出そうとして焦っていたが、今日は最初からボールが見えていた。打てそうな気がしていた」。横浜ファンが待ち望んだ1発を、だれよりも予感していたのは筒香自身だった。

 激動の10年シーズン最終戦で、地元の星が輝いた。筒香が「これからが勝負という気持ちです」と来季への意欲を示せば、加地社長は「必ずやこの地で優勝して、パレードをしようではありませんか」と本気で優勝を宣言した。この横浜で夢を追い続ける気持ちは1つ。右翼席からは、応援歌が鳴りやまなかった。【鈴木良一】

 [2010年10月8日8時53分

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