<パCSファイナルステージ:ソフトバンク0-7ロッテ>◇第6戦◇19日◇福岡ヤフードーム

 ロッテがクライマックスシリーズ(CS)史上初めて3位から勝ち上がり、5年ぶりの日本シリーズ(30日開幕)進出を決めた。ファイナルステージ第6戦で王者ソフトバンクに7-0で快勝し、王手をかけられてから3連勝の大逆転でCSを突破した。「10・19」の激闘として語り継がれる88年10月19日の近鉄とのダブルヘッダーでは1番二塁で相手チームの優勝を阻止した切り込み隊長が、22年後は西村徳文監督(50)としてチームを大舞台へ導いた。

 最後はひっくり返りそうになった。西村監督が3度宙に舞った。9回2死走者なし、ソフトバンク小久保裕紀内野手(39)の飛球が西岡剛内野手(26)のグラブに収まり、歓喜の瞬間が訪れた。「素晴らしい選手、コーチ、スタッフと一緒にやってこれて、しかも1年目に胴上げされて、最高です」と、1年生監督の目には涙が浮かんだ。

 シーズン終盤からの快進撃の再現だった。中4日で送り込んだエース成瀬善久(25)が完封。打線は集中攻撃を披露。5回2死走者なしからの猛攻。里崎、西岡の連打と清田の四球で2死満塁。井口の死球で1点先制。続くサブローは押し出し四球。さらに今江の中前2点適時打が飛び出した。8回には大松の2ランでトドメを刺した。1勝3敗の負けられない状況から3連勝。土壇場の強さは強烈だった。

 ロッテ愛が結実した。昨年の監督就任時、「僕のような鹿児島の無名選手を育ててくれた球団に感謝しています。1度もユニホームを脱がず、ここまでやらせてくれた。僕はロッテが大好きなんです」と、29年分の恩返しとなるチーム再建を強く誓っていた。生え抜き監督としては初の日本シリーズ進出を果たした。

 伝説の舞台はまた「10・19」にやって来た。88年。優勝をかけた近鉄とのダブルヘッダーに、1番二塁で出場。2試合目の10回1死一塁から併殺を完成させ、近鉄の優勝を事実上消したのは西村監督だった。試合前に「10・19」級伝説の再現について問いかけられ「そうなればいいですね」と意気込んだ。22年の歳月を経て“劇場”は川崎から福岡に移ったが、くしくも同じ日にリーグ3位から史上初のCS突破を決めた。

 我慢の人だ。「10・19」の2戦目に先発した園川氏は言う。「西村監督は、選手の時代から我慢強い人だなという印象。コーチになってからもバレンタインと選手の間に立って、いろんな我慢を強いられていた。CSに入っても、ほとんどオーダーを固定して戦っている。サブローなんか、調子が上がっていないけど、ずっと4番で使ってもらっていれば、意気に感じる部分もあるんじゃないか」。我慢が決戦で生きた。

 西村監督は「毎日胃が痛いですよ。監督になって楽しいということはなかった。決断、選択の連続です」と話す。最善策は鬼采配の時もある。その決断力で、用兵、継投など、打つ手はズバリと当たった。

 西村監督は「みんなで1つになってスローガン『和』でやってきた結果。千葉に帰って、日本一を勝ち取りたい」と力強かった。さらに「3位でなく、来年はリーグ優勝でシリーズに行きたい」とも話した。5年ぶりの日本一へ。この勢いで、中日でも巨人でも突き破る。【斎藤庸裕】

 [2010年10月20日9時23分

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