日本シリーズが30日、ナゴヤドームで開幕する。29日は監督会議が行われ、セ・リーグ覇者の中日落合博満監督(56)は主催の日本野球機構を質問攻めにして、会議を“占拠”した。パ・リーグ3位から勝ち上がってきたロッテ西村徳文監督(50)は、現役時代のチームの先輩である落合監督に「胸を借ります」と控えめに挑戦状。それぞれの形で戦闘モードに入った。

 落合監督が監督会議を“独占”した。ナゴヤドームで行われた監督会議で、第3戦(千葉マリン)の3回と5回に5分間のインターバルが入ることに疑問を呈し、主催の日本野球機構(NPB)を質問攻めにした。

 申し合わせ事項の途中で「第3戦の3回と5回に5分間のインターバルが入ります」と規則委員に告げられると「なんで?」と反応。「テレビ局の都合(CMなど)とファンサービスのためです」という説明に鋭く切り返した。

 「12球団の監督会議で、オレは野球は時間制じゃないから短縮する意味はあるのかって聞いた。そしたら(前コミッショナーの)根来さんが日本シリーズも、オールスターもそうするからと約束したんだ。それをほごにするのか」。

 NPBは試合時間短縮のためイニング間のスピードアップを各球団に言い渡した。最も影響を受けたのが投手で、規定された2分45秒内では準備しきれず、最大5球の投球練習を2、3球で終わらなければならない事態が急増した。にもかかわらず、シリーズだけ特例が認められることに矛盾を感じたようだ。

 さらに落合監督が「テレビのため?

 ファンサービスのため?」と質問すると規則委員が「両方です」と返答。ここで森ヘッドコーチが「では、なぜ第3戦だけなのか?」と詰めよると最後は「テレビのためです」と答えた。「ファンサービスとか取り繕うからおかしいんだ。最初からテレビのためですってはっきり言えばいいじゃないか!」。落合監督のこの言葉に会場は静まりかえった。

 結局、この問題は井野審判部長が交代した投手に5球の投球練習を確保することを確約。落合監督が「それで、いいですか?」と同意を求め、西村監督が「はい、いいです」と承諾して決着した。結果的にシリーズ中、投手に5球の投球練習を保証できた指揮官は納得した表情で矛を収めた。

 西村監督がひと言しか発しなかったのに対し、約40分間の会議を独占した。「かみついたわけじゃない。当たり前のことを言ったまでだ」。短期決戦で勝負の鬼と化す指揮官は同時に“ルールの鬼”でもある。この日の姿は完全に真剣勝負モードに突入している証しだった。【鈴木忠平】

 [2010年10月30日9時10分

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