<日本シリーズ:中日12-1ロッテ>◇第2戦◇10月31日◇ナゴヤドーム

 日本シリーズ史上初の速攻だ。中日がロッテに雪辱し、1勝1敗のタイとした。1回に4点を先制するなど、3回までに10点を奪うシリーズ史上初の猛攻で粉砕。第1戦で4打数無安打だった切り込み隊長・荒木雅博内野手(33)が3回までに3打席連続安打で速攻劇を演出した。チームは14安打を放ち、球団最多12得点。第3戦は2日、千葉マリンスタジアムで行われる。

 打線大爆発の着火点となったのはまぎれもなく荒木だった。1回に先頭で出塁し、先制のホームを踏むと、2回にも右前打でチャンスメーク。3回にも右前打を放ち、日本シリーズでは史上3人目の3イニング連続安打の快挙だ。3回を終わって10得点は、長い球史をひも解いても過去にないスピード“KO”。速攻の仕掛け人は、竜のリードオフマンだった。

 立ち上がり不安定のロッテ先発マーフィーの出ばなをくじいた。初回の初球をいきなりガツン。「昨日はガツガツ行きすぎたんで1歩引いていこうと思った。けど、体がうまく反応してくれた」。変化球を左前にはじき返した。右前打で出塁した2回には盗塁をしっかり成功させて“足”でもチャンスメーク。「今年はああいう攻めができてなかったけど、良い攻めができたと思う」。第1戦は4打数無安打に加えバンド失敗の併殺打。屈辱を力に代え、打って走ってフル回転した。

 3年前に中日ナインが演じた逆転劇。その中心にいたのも背番号2だった。07年の日本シリーズ日本ハム戦では初戦で痛恨の黒星を喫した。だが、そこから一気の4連勝。53年ぶりの日本一を決めた。荒木は第2戦以降は3試合連続で初回に出塁し、得点に絡んでいた。この日は、その予感を漂わせる暴れっぷりだった。

 遊撃手として迎えた初めてのシーズン。積み上げてきたものを見つめ直した。「今年は何も考えないでやろうと思う。もう1度、一からレギュラーを取るつもりでやる。発想の転換が大事。打ったら三塁に走るくらいの」。プロ15年目を迎えた今季、球界の名手が一からスタートを切った。

 1月1日。時計の針が午前0時を過ぎたころ。熊本県の実家に帰省していた荒木が、真っ先にしたこと。それは“素振り”だった。無心でバットを振り込み、早朝から熊本・美里町にある3333段の「日本一の石段」へ向かい登った。「上に何かがある分けじゃないけど、登りたくなった」。新たなチャレンジに向けて心と身体をリセットする儀式だった。

 試合の大勢が決した8回に、荒木は西岡のフライを背走しながらキャッチ。ユニホームを泥だらけにしながら全力でプレーを続けた。「まだ先があるので、今日は今日で切り替えて千葉に向けてやっていきたい」。本拠地での連敗を阻止して1勝1敗。本当の勝負はここからだ。荒木は歓喜の瞬間まで、がむしゃらに日本一への階段を駆け上がる。【桝井聡】

 [2010年11月1日11時8分

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