西武渡辺久信監督(45)が26日、主力4選手に異例の「全試合フルイニング出場」指令を出した。不動のレギュラーを張る片岡、栗山、中島、中村のさらなるレベルアップのため、限界に挑戦させる。1チームから4人の全試合フルイニング出場は、1リーグ時代の35試合制だった1944年の近畿日本以来。高いハードルを設定して潜在能力を引き出し、08年以来のV奪回を目指す。

 08年就任以来、渡辺監督が手塩にかけて育ててきた「1番片岡、2番栗山、3番中島、4番中村」。中島が28歳で、ほか3人が27歳と脂の乗りきったヤングレオ軍団の象徴に対し、来季飛躍への課題を与えた。「20代中盤なんだから、全員がフルイニング出場を目指してほしい。今年のクリ(栗山)のように、出続ければ数字もついてくる」と“鉄人化”を求めた。

 ハードルは高い。全試合フルイニング出場は、パ・リーグではチームでシーズン1人が最多。チーム4人が記録したのは、1リーグ時代に35試合制だった44年の近畿日本までさかのぼる。今季は栗山、昨季は中島がクリアしたが、144試合の長丁場となった今は年に数人しか出ないほど難しい。

 だが“実績”のない2人のモチベーションは高い。中村は今年右ひじを手術して3年連続本塁打王を逃したが、ここ数年抱えていた痛みの原因が解消されたのは心強い。終盤に右ふくらはぎを痛めた片岡は回復に専念し、5年連続盗塁王へ完全復活を誓っている。

 今季の西武は優勝目前で失速。故障者続出も原因だが、勝負どころでのもろさも目立った。多少のケガや痛みがあっても試合に出続けることで、精神的なタフさが養われる。フルイニング出場を目指す過程で、厳しい状況でこそ力を発揮できる選手になってほしい。主力4人に向けた渡辺監督の願いだ。今のところ、ドラフトで早大・大石を獲得した以外は目立った補強がなく、現有戦力の奮起は不可欠。ナベQ指令にこたえる若獅子が1人でも多く出てくれば、08年以来のV奪回に近づくことは間違いない。

 [2010年12月27日7時48分

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