外野席後方の防球ネットは、まったく意味をなさなかった。次から次へと打球が上空を通過し、場外へと着弾。大飛球を生み出したのは日本ハム中田翔内野手(22)のバットだった。

 沖縄・名護キャンプの2日、フリー打撃で45スイング中、場外弾5本を含む11本の柵越えを飛ばした。「両ひじのたたみ方を意識してやっています。この調子がずっと続くとも思っていないし、気持ちを引き締めていきたい」。13本のアーチを架けた前日1日に続くホームランショーにも、慢心はなかった。

 圧巻は18スイング目だ。高々と舞い上がった打球は、左中間席にそびえ立つ、高さ27メートルの照明灯上部を直撃。ガーンという衝撃音が球場内に響き渡った。“障害物”がなければ、推定150メートルは飛んでいたであろう大飛球。「下半身の意識づけということは変わっていません。だから下半身強化とずっと言ってきた」。シーズン終盤に失速した昨季の反省を踏まえ、阪神金本、ツインズ西岡らとの自主トレでいじめた下半身が、飛距離という形でも成果を示している。

 周囲の目も大きく変わってきた。入団以来、愛情を込めた厳しい評価が多かった梨田監督は「一番成長したなと思う。(打撃)ケージに入った瞬間、1球も無駄にしないでおこうという気持ちが見える。いいこと」と、一転して大絶賛だった。田中打撃コーチも「クリーンアップを打つ力はある」と期待し、7日から始まる紅白戦も中軸に入る予定だ。

 慣れない?

 周囲のべた褒めに「まだ2日目。最後までそう言ってもらえるようにしたい」と謙虚に返した中田。シーズンで結果を出すまでは、多くを語らず汗を流す。【本間翼】

 [2011年2月3日12時50分

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