日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)が、東日本大震災に対するプロ野球界の在り方に一石を投じた。13日、2軍の千葉・鎌ケ谷で再開した全体練習に参加。高校時代を過ごしたゆかりある東北地方など日本全域に広がっている惨状に「野球をやっていて、いいのかと思う」と複雑な胸中を明かした。梨田監督は、25日に控えた開幕の延期を提案した。パ・リーグは明日15日に都内で緊急理事会を開催。被災地の1つ、仙台(Kスタ宮城)で行われる楽天ロッテ戦を中心に、開幕カードの開催時期や球場などについて話し合うとみられる。

 偽らざる思いを打ち明けた。3日ぶりにユニホームを身にまとっても脳裏から離れない、思い。ダルビッシュは重みある言葉で表現した。「野球人である前に、人間でもあるので。野球をやっていて、いいのかなと思う」。東北高時代に3年間過ごした仙台を含め、被災地だけではなく日本中が失意の中にある。「いつものように野球だけ考えて、生きていけない」と心情を語った。

 高校時代のチームメート、後輩ら、いまだ安否が確認できない人もいるという。命は無事だったが、自宅を流された知り合いもいる。「困っている人が多くいるのに、そういう時に(野球は)どうかな、と思う。1人でも多くの人に助かってほしい。それは身内だけではなくて…」。

 もどかしさを抱えながらこの2日間、「支援」をしてきた。自分のツイッターで、一般利用者から投稿された有益な情報などを発信するなどしてきた。86年チェルノブイリ原発事故(現ウクライナ)の当時の被害状況をわざわざ調べ、この日の練習中に他選手らへ説明するシーンもあった。

 ダルビッシュに呼応するように、梨田監督も開幕延期案を提案した。「25日に開幕していいのかな?

 そういう状況ではないと思う」。ダルビッシュは今後、事態が沈静化してから具体的な支援策を検討する。今は、ただ「寂しいというか、悲しいというか…」。第二の故郷、そして日本中を憂い、思いの丈を、球界へ投げ込んだ。【高山通史】