<阪神4-1ヤクルト>◇29日◇甲子園

 トラが止めると思ってたんや~。9連勝中だった首位ヤクルトに甲子園で快勝した。主役は4番の新井貴浩内野手(34)。4回にフェンスオーバーまであと1メートルの直撃二塁打で逆転チャンスを作り、5回に追加の2点打。流れるような攻撃で、開幕戦以来の「3点差勝ち」を収めました。ひっさしぶりの楽勝で、トラの黄金週間が幕開けや~。

 決勝打は打っていない。勝ち投手でもない。でも、この男が主役だった。3人のヒーローが上がったお立ち台。久保、林威助に続いて最後に紹介された新井に、最大級の拍手が降り注いだ。貢献度の高さはファンも分かっていた。

 2-1の5回。2死からマートンの左前打、平野と鳥谷の四球で満塁。打席に向かった4番打者の心は1つ。「積極的にいく」。カウント1-1から内角にシュートしてきた139キロを思い切り引っ張り、三塁右を破った。ドでかい「2」の数字をスコアボードにともした。

 「久保もいい投球をしていた。何とか追加点をとりたかった。2死からマートンが出て、恵一とトリがよく見極めてくれた。結構難しい球だったけど、うまく反応できましたね」。

 その前の打席でも4回1死一塁から左中間フェンス直撃の二塁打。一気にチャンスを広げて、林の逆転二塁打を呼び込んでいた。2本のスイングが、眠れる猛虎打線を活気づけた。

 前日の広島戦。初回1死一、三塁で併殺に倒れた。これが響いて3連敗。「オレが打っていればあんな展開にならなかった」と嘆いた。「今日は今日と思って臨んだけど、すぐに取り返すつもりだった」。悔しさをバットに込めた。

 大観衆の前でベストプレーを見せたかった。「明日もお待ちしています!」とお立ち台から叫んだ。甲子園は今季最多4万6651人を飲み込んだ。今年のプロ野球は公式戦すべてがチャリティー試合。労組プロ野球選手会の会長を務める新井は「多くの方に球場に足を運んでもらうことが被災した方々への励ましにもなる」と願う。

 うれしい出来事もあった。この日、友人の柔道家・鈴木桂治(30)が復活を告げる4年ぶりの全日本選手権Vを果たした。09年1月に鹿児島での護摩行で知り合い、親交を深めてきた。苦闘続きのアテネ五輪金メダリストを励まし、自らも刺激をもらった。「苦しんでいたのは知っていた。本当、よかった」。自分のこと以上に喜んだ。

 「大きいね。あまりうまく(点を)取れていなかったから、ああいう取り方なら勢いづく。出て行く球児も少し余裕があったかな」。真弓監督が実感を込めた。3点差以上の勝利は、実は12日開幕戦で広島を7-4で下して以来。つないで、つないで、主砲がガツン。理想の形でツバメ特急を止め、こちらは連敗をストップ。最高潮のムードでゴールデンウイークに突入だ。【柏原誠】