<横浜3-2阪神>◇8日◇ハードオフ新潟

 最下位は変わらないけど、今年の横浜は違う?

 同点の9回裏1死から吉村裕基外野手(26)が右中間スタンドへサヨナラとなる3号ソロを放った。今季初の3連勝は、2年ぶりとなる同一カード3連勝。阪神戦の3連勝は3年ぶりとなる。まだ借金4の最下位にはいるが、そう簡単には落ちていかない。

 本塁を囲んでできた歓喜の輪に、サヨナラのヒーローは前転しながら飛び込んだ。だが、横浜吉村は、すぐに後悔することになった。「そのまま行ったらたたかれると思って、前転したんですが…。余計、痛かったです」。地面に押しつぶされ、うれしくも痛すぎる、祝福を受けた。

 9回裏1死走者なしで打席がまわってきた時、ニヤリと笑った。意識的だった。「最初の2打席で結果が出なくて、顔が暗い自分がいた。こんな暗い顔をしてたらいかんと思って笑いました」。笑う門には福来るというのは本当だった。

 入るとは思わなかった打球が、フェンスを越えた。「センターを守ってて、あそこに本塁打はないだろうなって思ってたんです」。この日は右翼から左翼に向けて10メートルの強風が吹き続けていた。打った瞬間は「抜けてくれ」と思いながら走っていた。

 最後のひと伸びは、ファンの声援のおかげだったのかもしれない。「いつもは、しっかりやれとか言われるのに、今日は右中間スタンドのファンが常に応援してくれたのがうれしかった」と、本拠地よりも多い2万6058人ものファンが入った新潟のスタンドに、礼を言った。

 今春のキャンプでキャプテンの村田に「今年は絶対にやる」と宣言した。「自分で言うのもどうかと思いますが、前はちょっと子どもだったなと思う」。今は日々、考えて整理することができている。その余裕が結果につながっている。

 母の日の1発は福岡の実家にも届いただろう。お花セットを贈ったのだが、手違いで2日前に届いてしまった。サヨナラ弾は贈り直しのプレゼントだ。「僕も26歳になりましたが、まだまだ親からは子ども扱いされます。一生懸命、息子はやってます。これからもよろしくお願いします」。3年ぶりの対阪神同一カード3連勝を決める1発には、母への思いを込めた。【竹内智信】