落合竜が投手総動員態勢で、鬼門・甲子園を突破する。11日、富山でのヤクルト戦が雨天中止となり、4日間試合がないまま13日からの交流戦前ラストカード、阪神3連戦(甲子園)を迎えることになった。日程に余裕が生まれたことで、最大で先発7投手がスタンバイ可能。借金2から、守りの野球で貯金生活に転じ、交流戦に突入する。

 北陸の雨はこの日もやむことはなかった。前日の金沢に続いて、富山でも早々に中止が決定した。ただ、球団史上最大13連戦を生んだ恨めしい雨は、見方を変えれば恵みの雨でもある。

 「いい方向に考えていくしかない。(自分が)投げるところでチームが勝てるようにしたい」。

 この日、先発予定だった吉見一起投手(26)は雨空を見上げながら、すでに阪神戦へと気持ちを切り替えていた。2勝0敗、防御率0・45と安定感抜群の大黒柱は、そのまま13日の阪神戦に登板することが予想される。もともと甲子園での3連戦はチェン、ネルソン、川井の先発が濃厚だったが、雨のおかげで吉見、チェン、ネルソンの3本柱を投入できる態勢が整った。

 それだけではない。前日のヤクルト戦に登板予定だった朝倉、2軍調整中の山井、中田賢も控える。17日からは交流戦に突入するだけに、投手陣に余裕ができる。「こういう天気では仕方ないでしょね」。朝倉はこう言って、名古屋へと戻った。交流戦にまわる投手、中継ぎに入る投手、さまざまな可能性があるが、阪神戦にスタンバイできる先発投手は、実に7人を数える。

 落合竜は神宮を苦手にしており、今季も1勝5敗と散々な目にあっている。それと同じくらい相性が悪いのが、甲子園だ。昨季は2勝6敗2分け。熱狂的ファンによる独特の雰囲気に加え、本拠地ナゴヤドームの人工芝に慣れている選手たちが、土のグラウンドで思わぬエラーを犯すことが多かった。その結果、大量失点を喫することもあった。ただ、今回は投手王国の層の厚さを存分に見せつけることができそうだ。

 「(阪神は)乗せると怖い打線なので、乗せないように投げていきたい。低めを意識して自分の投球をするだけです」。吉見はそう言って、雨の北陸を後にした。現在、阪神は最下位に沈んでいる。リーグ随一の戦力を誇る虎には、もうしばらく眠っていてもらうつもりだ。【鈴木忠平】