<楽天2-0ロッテ>◇1日◇Kスタ宮城

 スキがなくなっていく。楽天田中将大投手(22)が今季2度目の完封で、自身の連勝を5に伸ばした。ロッテ打線に対し終始ストライク先行の投球。先頭打者を3度出すもコントロールの精度を上げ、無四球でフィニッシュした。通算100回1/3を投げ、与えた四球はたった7個。今季は荒々しい闘争心と、繊細なコントロールとが見事に同居している。防御率は1・08でトップを維持。次戦も完封すれば0・99と、1点を切る。

 最終回も10球の速攻締めだった。田中には「終盤8回ころ、ようやくしっくり来ました」と余裕があった。その8回無死二塁、1番岡田に回った。「正しいフォームで投げることができた」のは、ここからだった。岡田を三振に退けると初球の入りが一層厳しくなり、内外角の隅いっぱいにスプリットを落とした。伊志嶺、井口への勝負球はともに外角直球。「走りはまあまあ」でも、追い込む過程の制球力がこの上なく高い。悠々と上をいった。

 無四球完封。制球力は今季劇的に向上したのか。原風景をひもといていけばヒントが見えてくる。

 田中

 コントロールから野球をスタートする必要はないと思いますね。小学校のころは悪かったんですよ。でも気にしてませんでした。(巨人)坂本と2人で、どっちが遠くまで投げるか競争してました。

 10年ほど前、兵庫・伊丹の昆陽里(こやのさと)小グラウンド。後にリーグを代表する投手と野手となる少年2人は、毎日、投げ合いをしていた。

 田中

 気が付くと、肩が強くなって、強いボールを投げることが出来て。僕は最初キャッチャー。坂本もエースでなかったですよ。

 中学に進むと突然制球が良くなった。あっという間に、昆陽里タイガース時代のエースに負けない投手に変身した。

 田中

 身長とか急に伸びるじゃないですか。体がしっかりしてきたら自然と良くなりました。大事なのは体全体を使って大きく投げること。遠投は特に大切。

 無心でボールを遠くへ投げる中で、鉄砲肩が備わった。遠投の重要性も知った。肉体の成長が、制球力を促進する最大の良薬であることも知った。少年野球から最高峰へと舞台は変わったが、実体験から得た知識は強い。力に任せ投げ壁に当たった。全身を使い、負荷のない投げ方を探求した。Kスタ宮城のスタンドを走り込んで体をつくり、遠投で備えてきた。今季、何かがあったからではない。プロ5年生。蓄積が開花し、こんな境地に今はいる。

 田中

 ベース板の上で勝負して、打たれないつもりで投げている。四球を出すくらいなら白黒ハッキリした方がいい。

 今季与えた四球は7個しかない。「オールスターで、12万人以上もの方が投票してくれた。感謝の気持ちを込めて、もっともっと野球が好きになってもらいたいと思って投げました」と、味のある言葉で結んだ。自分がとりこになった野球の魅力を、自分の腕であまねく伝える。制球同様、志もブレない。【宮下敬至】