<西武9-3オリックス>◇10日◇西武ドーム

 歴史を塗り替えそうな勢いだ。西武中村剛也内野手(27)がオリックス戦で特大の24号ソロを放った。本塁打数両リーグトップを独走する勢いが、ここにきてさらに加速。144試合換算ではシーズン55発のプロ野球記録に肉薄するペースで量産中だ。打点もチームメートの中島と並ぶリーグトップタイの49。4番中村を中心に3試合連続2ケタ安打と息を吹き返しつつある打線の奮起で、チームも連勝を飾った。

 中村らしい放物線を描いて、打球は当然のように左翼席上段へ消えていった。フィガロのチェンジアップをとらえた特大弾は、今季オリックス戦早くも9本目。5回1死、大勝ムードが漂う中、主砲のド派手な“花火”でスタンドのボルテージは最高潮に達した。「完璧です!」。それだけ言って報道陣から逃げようとしたほど、会心の当たりだった。

 リーグ戦再開後、15戦10発。この間打率は4割を超え、放った20安打のちょうど半分が本塁打という驚異の確率を誇る。前触れはあった。5日ソフトバンク戦でのこと。三塁上空に上がった打球が西武ドームの天井を直撃した。結果はファウルフライとなったが「高いフライが上がるのは、いいタイミングで打てている証拠」と自信を深めた。大事なのは打球の角度。鋭いライナー性のヒット1本よりも、高々と上がった内野フライが自らのバロメーターになるという、天性の長距離砲らしい発想だった。

 63試合で24本塁打は、144試合に換算すると54・8発というファンがゾクゾクするような数字になる。「計算上の話はやめましょう。シーズンが終わってから」と自然体を貫くが、なぜ各打者を悩ませる統一球を苦にしないのか。

 三振を恐れないフルスイングに代表されるように、自分の形を崩されないことが一因だろう。同僚の栗山が「インパクトの時、両腕と自分の体の間にできる二等辺三角形をつくるのが抜群にうまい」と中村の打撃を評したことがある。ボールと距離を取り、本塁打にできるポイントでとらえる技術が圧倒的な飛距離を生み出す。

 強烈な存在感を放つ4番に引っ張られたのか、チーム打率2割3分台と低迷してきた打線が3試合連続2ケタ安打と復調気配だ。依然本塁打、打点の2冠。特に本塁打は2位に10本差がついた。タイトル、そして記録更新。今の中村なら、決してむちゃな注文ではない気がする。【亀山泰宏】