<ソフトバンク4-1西武>◇19日◇福岡ヤフードーム

 20度目の正直だ!

 ソフトバンク大場翔太投手(26)が1172日ぶりの先発白星を挙げた。今季初先発で、西武打線を6回途中2安打1失点。1年目の08年5月3日オリックス戦で先発勝利をマークして以来、19度も首脳陣の期待を裏切り続けた右腕が、背水のマウンドで結果を出した。チームは貯金を今季最多の23とし、首位をキープした。

 「もう俺は、今までの俺じゃないんだ!」。気持ちが乗り移った球だった。3回2死満塁から、4番中村に押し出し四球で先制点を与えた直後だった。5番フェルナンデスへの5球目。内角高めへ、こん身の145キロ直球を投げ込んだ。空振り三振。大ピンチを持ち前の剛球で切り抜けた。

 大場

 最悪、四球とか安打は絡んでくると思って、球を置きにいかず腕を振っていくことだけを考えた。

 立ち上がりから腕を振りまくった。2回まで無安打3奪三振。3回に突如乱れ3四球で先制点を許した。「やっぱりまたダメなのか…」。ファンもベンチもそう思ったはずだ。だが、今回は違った。

 これ以上、期待を裏切り続けられなかった。08年のデビュー戦で、無四球完封というリーグ初の偉業を達成。だが結局08年は3勝止まり。09年は12度の先発チャンスをもらいながら未勝利だった。中継ぎに降格した昨季も唯一の先発チャンスで5回途中5失点KO。4年間で19度の先発チャンスをふいにした。

 手を差し伸べてくれたのは和田だった。ハードなトレーニングで知られる自主トレに同行。技術の前に、私生活からの見直しを指摘された。

 自主トレ中には厳しいカロリー計算のもと、和田と体重増を図った。1日に8000キロカロリー摂取がノルマ。ストイックに自分を追い込むことなど、経験になかった。食事を残してしまった日の深夜。1度だけ誘惑に負け、コンビニでスナック菓子とアイスクリームを買ってこっそり食べた。見つかり、激怒された。頭を丸め、心の底から自分を変えることを誓った。

 今季は中継ぎで好投を続けた。15日も2番手で白星。1172日も先発勝利がなかったが、5日で2勝したのも事実だ。ただ全力で腕を振り続けた影響で、6回2死の場面で右腕がつり降板。完璧な「成長」にはあと少しかかりそうだ。それでも指揮官は言った。

 秋山監督

 一番は大場。3回の場面を1点で乗り切ったのが成長したところ。

 指揮官も成長を認めざるをえない快投で、大場がチームの貯金を今季最多の23にした。【倉成孝史】