<楽天4-1ロッテ>◇13日◇Kスタ宮城

 楽天の元祖ヒットマンが面目躍如だ。5番左翼でスタメンの草野大輔内野手(34)が8回、1死一、三塁の好機で決勝の右前適時打を放った。4回の二塁打で通算500安打を達成した遅咲きの強打者。猛打賞で節目に花を添え、ロッテ戦連勝に貢献した。「連敗した分を取り返さないと」。打線の真ん中にどしっと座りチームを上げ潮に乗せる。

 ミートするポイントは1点しかなかった。同点で迎えた8回1死一、三塁の好機。草野がロッテ3番手ロサの4球目に反応した。ドミニカ共和国出身投手特有の、下半身を張らせ上体を一気にかぶせる投球フォーム。落差十分に揺れ落ちてきた。「多分チェンジアップかな」。冷静に素直にバットを差し出し芯に合わせた。決勝打の肩書にふさわしいバット操作。一、二塁間のど真ん中を華麗に割った。

 バットのヘッドが立ったままスイングし、最短かつ1点でとらえる。野球好きの誰もが認める、玄人好みの打撃技術を持っている。今年35歳の6年目、楽天に8巡目入団という遅咲き。走力&守備力を補って余りあるヒットマンは、4回の二塁打で通算500安打に到達した。「カズオさんに笑われちゃうなぁ」と、試合前に国内通算1500安打の表彰メダルをもらった松井稼と比較しおどけた。

 だが山崎の休養時は即4番に入り、ここ2試合左翼でもスタメン出場したように、打撃に関する首脳陣の信頼は分厚い。「序盤から点が入らなかったが悪い感じじゃなかった。いつかは入ると思ってた。みんな、いいつなぎをしている。7連敗を取り返さないと。あと5つだね」の言葉が頼もしかった。

 テクニックは最高でも、素朴な人柄は変わらない。東京遠征時はサラリーマンの味方・居酒屋和民に足を運ぶ。「社会人時代のこと、忘れたくないからね。安いけどおいしいんだよ。特にギョーザ。間違いないよあれは」と、313円の看板メニューでスタミナをつける。球場へ自転車通勤することも多く故郷宮崎のお国言葉もちらほら。通す自然体とプレーとのギャップがファンをつかむ。

 スタンドに向かって音頭を取り、勝利恒例の万歳三唱を決めた。お立ち台ではこう言った。「夏休みももうすぐ終わるんで、みんな早く帰って宿題をやりましょう!」。草野がそう言うなら宿題だってはかどる。イヌワシ党の少年少女は言葉を守り、今日もKスタ宮城へ足を運ぶ。【宮下敬至】