<ヤクルト2-10広島>◇8月31日◇神宮

 新人王は譲らん!!

 広島が首位ヤクルトに大勝した。流れを呼び込んだのは先発福井優也投手(23)だ。5回2死二、三塁の局面で、自らの暴投で本塁ベースカバーに入った際に三塁走者と交錯し、右手を負傷したが、この回を投げきった。結局5回1失点で降板したが、今季7勝目をマーク。新人では巨人沢村(6勝)を抜いてトップに立った。早大時代に活躍した神宮でも初勝利を挙げた。

 右手親指のツメの間から出血しても、迷いなく右腕を振った。ルーキー福井がピンチを迎えたのは3点リードした5回だ。2死二、三塁。代打ホワイトセルへの3球目が暴投となり、本塁ベースカバーへ。ここで三塁走者武内と交錯し、右手を負傷した。あと1死奪えば勝利投手の権利を得る局面。ベンチで治療後、マウンドに上がると再開1球目は最速タイの147キロ直球を内角へ。最後はスライダーで投ゴロに片づけ、気合で危機を1失点で乗り越えた。

 福井

 それまでは良かったけど、あの回(5回)は無駄な四球を出してしまった。(指は)大丈夫です。指のこともあったけど、5回までしか投げられませんでしたから…。

 先発投手としての最低限の責任を果たしても、反省が口を突いて出た。それでも、プロ入り初めて登板2戦連続勝利を挙げ、今季7勝目をマーク。新人王を争うライバルの巨人沢村の6勝を上回った。

 前回登板の8月25日横浜戦(マツダスタジアム)でプロ初完投勝利。その勢いを持続する序盤の力投だった。140キロ台中盤の速球を投げ込んで打者を詰まらせる。右足でしっかり立って投げ下ろす感覚を保ち、普段より右足すね部分のユニホームの汚れは目立たなかった。福井も「(速球は)置きに行った球は何回かあったけど、それ以外は良かったです」と確かな手応えをつかんだ様子だ。

 早大時代に11勝を挙げるなど、慣れ親しんだ神宮のマウンドはプロ2度目。リーグの違いこそあるが、盟友だった日本ハム斎藤、西武大石に先んじてプロ入り初めて、神宮で白星を挙げた。これには「良かったです」と胸をなで下ろした。キャンプイン直後の2月。右太もも裏の張りを訴え、回復に必死だった。早大には阪神鳥谷、ヤクルト青木らそうそうたるメンバーがそろう。南国では早大OBの食事会が催され、斎藤らが参加したが、これもキャンセル。「行きたかったんですけどね」と浮かない表情だったが、開幕に間に合わせるため、治療を最優先させた。

 4月からローテーションを守り、先発の一角として計算されている。野村監督も「(6回は)本人も投げたいと言ったけど、次のこともあるので。投げたい気持ちは買います」と話す。負けん気の強さが福井の原動力だ。Aクラス争いを展開するチームにおいて、いまや欠かせない戦力に成長した。【酒井俊作】