<広島1-4ヤクルト>◇13日◇マツダスタジアム

 打線の主役そろい踏みで、ヤクルトが10年ぶりVへ再加速した。6回に青木宣親外野手(29)が、先制の2点適時打。1点リードの7回無死一塁から、4番畠山和洋内野手(29)が自らの誕生日を祝う18号2ランを放った。8月は7勝15敗3分けと大失速したが、2人の復調で9月に入って10勝1敗。7連勝で貯金は今季最多タイの15に膨らんだ。待望の優勝マジック点灯は最短で18日。ツバメのラストスパートの勢いが止まらない。

 薄暮のマツダスタジアムに、清き大合唱が響く。敵地に集まった熱い燕ファンの叫びに、主砲は耳を澄ませていた。「♪HAPPY

 BIRTHDAY

 ハタケヤマ~」。やんちゃで鳴らした元問題児も、三十路(みそじ)にあと1年と迫る29歳の誕生日を迎えた。歌声を背に打席に立った第1打席、1回2死二塁のチャンスは力んで遊ゴロに倒れた。

 しかし、これもご愛嬌(あいきょう)。ここで終わらないのが、今年の畠山だ。1点差に迫られた直後の7回無死一塁。第4打席で広島豊田のフォークを、中堅左に特大弾でたたき込んだ。

 「バースデーホームランですよね?

 全然うれしくないよ。ホームランを打ったことがうれしい」と豪快に笑い飛ばした。

 勝負の9月に主役がそろい踏みだ。両軍無得点で迎えた6回2死二、三塁から、青木が中前に先制2点適時打を放った。広島のマウンドには早大の後輩福井が立っていた。敬遠はなく、勝負を挑んできた。6球続けてきた直球を、見逃さない。「流れは引き寄せられたと思う。ここ一本で決められたのは良かった」と喜んだ。

 これで9月に入ってチームは10勝1敗と驚異的なペースでラストスパートに入った。7勝15敗3分けと苦しんだ8月、畠山は疲労が積み重なり、不調だった青木は月間打率2割2分5厘と沈んだ。それが月が替われば一転。73打点で再びリーグ単独トップに躍り出た畠山は、今月に入って3本塁打14打点と両部門で、早くも8月の数字に並んだ。青木は9月に入って6度目の複数安打で3割4分1厘。ここ5試合は4割5分5厘と大当たり。通算135安打でトップの阪神マートンに1本差と迫った。

 1番と4番。打線の軸が復調し、チームも一気にV字回復した。先制点の場面は犠打後の1死二、三塁から9番赤川が三振に倒れた直後だった。小川監督は「青木がよく打ってくれた。あそこで点が入らなかったら、僕のミスでどうしようかと思った。赤川で何の策も講じないで三振していたので。畠山もよくバースデーアーチを打ってくれた」と目尻を下げた。

 これで貯金は今季最多タイの15。前日にクローザー林昌勇に焼き肉をごちそうになって前祝いした畠山は試合後、観戦に訪れた美里夫人とバースデーディナーに出掛けた。残り31試合。「まだまだ負けられない試合が続く」と引き締める。最短で優勝マジックは18日に点灯。愛妻とのつかの間の休息を挟み、また大爆発だ。【前田祐輔】

 ◆畠山和洋(はたけやま・かずひろ)1982年(昭57)9月13日、岩手県花巻市生まれ。専大北上では甲子園に2度出場し、高校通算62本塁打。00年ドラフト5位でヤクルト入団。昨季は自己最多の14本塁打を放ち、規定打席未満ながら打率3割をマークした。通算469試合、打率2割7分1厘、47本塁打、216打点。180センチ、96キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸4100万円。