中日は22日、落合博満監督(57)が今季限りで退団し、後任に球団OBで元監督の高木守道氏(70)が就任すると発表した。落合監督はシーズン終了まで指揮を執り、高木新監督は2年を基本にした複数年契約が濃厚。常勝監督の交代を、優勝争いが佳境の時期の、しかも1、2位直接対決の直前に発表する異例の事態に、球団内外は大きく揺れた。<解説>

 

 球団の発表、その後の説明を聞いても疑問は3つ残る。なぜ、落合監督を退任させるのか。なぜ、このタイミングで発表したのか。そして、なぜ、後任が再登板の高木氏なのか。

 退任理由について、会見でこんな一幕があった。「殿堂入りもされ、節目だということで…」。佐藤球団代表が説明すると、報道陣が「高木さんも殿堂入りしてますが」と突っ込んだ。「…」。同代表は返答に窮した。

 球団首脳が公言できない主な理由は金銭面だろう。近年、ナゴヤドームの観客動員が減り続けている。白井オーナーも球団首脳も現場監督の責任にしているわけではない。ただ球団幹部によれば、星野、山田、落合監督らの2000年代前半は球団で年間5億~10億円の赤字があっても、親会社の中日新聞がそれを穴埋めしていたという。だが、新聞業界の先行きが不透明となった最近は年間1億円程度の赤字に抑えることを目標に、補強費も削減してきた。

 それでも、勝ち続けることで落合監督、球界屈指の人数を誇るスタッフ、主力選手の年俸と人件費は増大した。球団内部でも営業努力へ動き始めたが、観客動員増への確信が持てない中で「勝利」よりも「経営バランス」に比重を置いた。

 また、球団内部では早くから落合監督退任路線を固め、後任候補も探していた。9月までに結論を出すはずだったが、白井オーナーは現場への配慮、後任候補への疑問から決断を延期。そして「ベテラン」と評する高木氏再登板を決めた。

 ならば、あと少し遅らせられなかったか。25日までのヤクルトとの4連戦が終われば、優勝の行方は見える。発表時期は、白井オーナーの「26日案」をフロントの主張で繰り上げたという。4連戦で首位に肉薄すれば、さらに監督交代理由を説明しづらくなる-。球団首脳がそう考えたとしたら、戦っている選手はやりきれない。試合前、退任を説明しようとした球団首脳に対し、現場スタッフは戦いの最中だからということでそれを拒否したという。

 高木氏再登板の裏にはさらに次の監督への青写真が見える。球団ではパ・リーグのように生え抜き選手を指導者としてたたき上げ、監督に育てるプランがある。過渡期を迎えたチームを高木氏が再整備し、就任1年目で2軍を優勝に導いた井上2軍監督、そして、立浪氏など新世代の指揮官で黄金時代を築きたい。常勝指揮官を退団させた決断の成否が出るのは何年か先になる。【中日担当=鈴木忠平】