<阪神2-7中日>◇2日◇甲子園

 頼れる男が復活した。中日和田一浩外野手(39)が、初回2死満塁のチャンスを迎えた。阪神久保との対決はフルカウント。7球目、外角低めスライダーに体勢を崩しながら食らいついた。普通の打者なら“泳がされた”状態だが、和田は違う。バットのヘッドが残っている分、力を伝えられた打球は、遊撃鳥谷のグラブをかすめ左前に落ちた。2者が生還した。

 「完全に泳がされたでしょ。ああいう場面で全然打てていなかったし、チームがこういう状況なんで何とかしたかった。ボール球だったし、バットの先っぽだったけどね」

 照れ笑いで謙遜したが、リーグMVPを獲得した昨季、何度も見せた和田ならではの打撃だ。5回には直球を右前にはじき返し、7回には変化球を左中間に運んだ。3安打3打点で7月2日巨人戦以来、61試合ぶりとなる3安打猛打賞。「3本出たというのも初回のが大きいかな」。打撃改造、統一球導入、視力低下…。さまざまな要因が重なっての打撃不振で移籍後、初となる2軍落ちを経験した。どん底から戻り、復活への光が見えた。

 阪神との今季最終戦に完勝し、これで16カード連続負け越しなし。首位を2ゲーム差でピタリ追走する。落合監督は「こんなもんですよ。うちにベテランはいない。経験はあるけど、ベテランはいない。皆さん若い。若いプレーをしている。まだ老け込む年じゃない」と話した。明日から勝負の13連戦を前に、役者はそろった。【鈴木忠平】