<中日2-0ヤクルト>◇13日◇ナゴヤドーム

 吉見でマジック2だ。中日吉見一起投手(27)がマジック4で臨んだヤクルト23回戦(ナゴヤドーム)で3安打完封。ヤクルトに引導を渡すような快投でハーラートップの巨人内海に並ぶ17勝目。防御率も内海を抜きトップに浮上した。今日14日にも美酒に酔う。

 まるで前夜祭のような、力強いガッツポーズだった。開始から内野ゴロの山を築いた吉見の右腕はマジック2となった瞬間、誇らしげに揺れた。104球で被安打3。4連投中の浅尾ら救援陣の力も借りず完封。相手を封じ、仲間を温存-。自己最長の9連勝。前回登板の7日巨人戦では完封目前の9回に4点のリードを守れず降板し、チームも引き分けた。汚名返上。大黒柱の仕事だった。

 吉見

 今日は絶対に1人でいこうと思っていた。先制点も取ってくれましたし流れはこっちにあったので変なプレッシャーはありませんでした。

 自己最多を更新する17勝目でトップの巨人内海に並んだ。防御率も内海を抜き1位に浮上した。150キロ超の剛球や圧倒的な変化球があるわけではない。低めに制球しアウトを重ねる。地味だが、超一流職人がそろうオレ流の象徴的存在だ。

 今季は右肘手術の影響で出遅れたが、その後フル回転。例年になく体調管理に気を配る。シーズン通してベスト体重の86キロをキープ。食事の際に揚げ物を避けるようにしている。これにはウエート管理とともにもう1つの理由がある。

 オフに、野球を追究する近い人物から「投手の体は機械と同じ。機械も油を差し過ぎると可動域が狂ってしまうだろ?」と独特の理論を聞いた。半信半疑だったが「そういう考え方もあるのか」とかみ砕いて吸収。体調管理の1つの指針にした。精密機械のようなピッチング。その裏には、さまざまな考えを柔軟に取り入れ、自らの力に換えられるクレバーさがある。

 4年連続で2ケタ勝利を挙げているが「5年連続するまでは」とエース襲名はやんわり拒否。呼び名は関係ない。個人タイトルも「おまけ」という。「1日も早く決めたいと思います」。自宅を出る際にヤクルトを飲み忘れたが、ナゴヤドームでグイッと飲み干した。吉見の頭の中には目指す連覇以外ない。【八反誠】