<セCSファーストステージ:ヤクルト2-6巨人>◇第2戦◇30日◇神宮

 巨人がクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ進出へ崖っぷちで踏みとどまった。セ・リーグ最多勝の先発内海哲也投手(29)が6回3安打1失点と粘投。5回1死一、三塁の場面では自らスクイズを決めた。7回からは東野、山口、久保、西村と4投手で踏ん張った。対戦成績は1勝1敗。今日31日の第3戦に勝てば、中日とのファイナルステージ(11月2日開幕)進出が決まる。

 崖っぷちほど、力を発揮する内海の真骨頂だった。負ければシーズン終了の大一番。3回以降、毎回走者を背負ったが、6回を最少失点で切り抜けた。「4回以降はリズムを崩したけれど、何とか粘ることができた。いつもより疲れたけど、抑えられて良かった」。安堵(あんど)の表情を浮かべながら、力強いガッツポーズで左翼席のファンに応えた。

 勝利の瞬間の約5時間前だった。サブグラウンドでの練習後、混乱を避けるために通常はバス移動するところを徒歩でクラブハウスに向かった。予期せぬ先発投手の登場に神宮外苑が騒然。「内海頼むぞ!」コールを全身に浴びながら「めちゃめちゃ緊張してきたやん」と言った後、どんより曇った神宮の空に、男の誓いを立てた。

 内海

 もう勝つしかないんやからな。今日はオレの生きざまを見せるで。

 思えば苦難の8年間だった。エースの期待を受けながら、首脳陣から叱咤(しった)を浴びる日々。「僕の野球人生はこんなもんか…」と落ち込んだ時期もあったが「変わらなきゃいけないし、変えなきゃいけない」。昨オフからインナーマッスルを鍛えるトレーニングに取り組み、連日のアーリーワークを敢行した。

 あの日の悔しさを忘れたことはなかった。昨年のCS第1ステージの阪神戦。2戦目の先発予定だったが、初戦に勝利した直後、ホテルでスライドを告げられた。「チームの戦術やから」。多くを語らなかったが、サングラス越しから見える目は悔しさがにじんでいた。雪辱を懸けた今季、最多勝を獲得し、迎えたクライマックスシリーズだったが、与えられたのは2戦目。「特に、何も。1戦目と変わらず、重要な一戦」と気持ちを整理するすべがあった。勝利への執念は攻撃でも見せた。5回1死一、三塁、初球をセーフティースクイズ。待望の2点目を自らのバットでもぎ取った。

 内海が降板した7回以降は、チームスローガンの「結束」を表現するような必死のリレーで逃げ切った。7回2死二塁から山口、8回2死一、三塁からは守護神久保が登板。前夜は継投に失敗したが、原監督は信頼するリリーフ陣の積極起用で、ツバメ打線の勢いを止めた。「中継ぎ陣はしっかりしているので、安心して見ていた」と語る内海の言葉が全てだった。

 エースの好投と4人の救援陣の好投で勝敗を五分に戻し、今日31日に勝負の一戦を迎える。原監督は「明日、決戦だね」と短い言葉に闘志を込めた。【久保賢吾】