夜明けの暗がり残る倉敷マスカットスタジアム。三塁側ベンチ前に、そっとたたずむ紳士がいた。視線の先には、一心にバットを振る若者たち。「いいことだ」と背番号「77」の、その人はほくそ笑んだ。
楽天秋季キャンプ2日目の3日、大久保打撃コーチ主導のアーリーワークが始まった。午前6時半に宿舎発。草野、岩村のベテラン2人を除く野手全員が参加した。約1時間半、多い選手で1000スイング近く。その様子を星野仙一監督(64)がひそかに視察した。選手やコーチ陣には知らせず飛び入り“参加”した監督の脳裏に記憶がよみがえった。
「大学の合宿だった。夏は4時半。冬は5時半から。霜柱が立っててな。真っ暗な中、シャリシャリいわせて走ったわ。寒くてな。耳当ての上にバスタオルを掛けて。『アラビアのロレンス』みたいな格好で」
つらい時間を乗り越えた先に、プロに通ずる土台を築いた。
効果を、大久保コーチは「早い時間から動かし、早い時間に終われば、体内に乳酸をためずに睡眠に入れる。毎日続ければ12球団一の体力がつき自信になる」と説く。星野監督も「この若さで、朝からこれだけやって。習慣づけたらいい」と喜んだ。こうも付け加えた。「選手が、どう感じるか。眠いと思うのか。(付き合う)裏方さんやスタッフがいるんだから」。アーリーワークはチーム変革の胎動。感謝を忘れず、脱皮の秋とする。【古川真弥】



