新生「横浜DeNAベイスターズ」の新監督の最有力候補に、通算224勝左腕、工藤公康投手(48)が浮上していることが21日、明らかになった。若く、明るい人材を求める新球団にぴったり合致。また、理論的な投球やトレーニングで長く一線で活躍した経験は、成長段階にあるチームにとって適任と判断された。同社の球界参入について審議される今日22日の臨時実行委員会などの状況を見ながら、工藤に就任を要請する見込みだ。

 新生ベイスターズのかじ取り役として、DeNAはフレッシュな人材に白羽の矢を立てた。これまで、守安功社長は監督を人選する際の要素として「経験のある、なしは大きな要件ではありません。若くて(チームを)引っ張っていける人にお願いしたい」などと話していた。

 工藤は指導者経験がないどころか、まだ現役投手。昨オフに西武を退団し、今季はどこにも所属せずトレーニングを続けてきた。現役へのこだわりは強いものの、将来的には指導者を目指す気持ちも持っている。DeNAから就任を要請されれば、指導者への道を歩み始める可能性もある。

 論理的な投球フォームやトレーニングには定評がある。さらには雅子夫人の力を借りて食事にもこだわり、47歳の昨年までプロのマウンドに上がり続けてきた。存在そのものが、プロとしての手本だった。指導者としての力量は未知数だが、DeNAが求める「チームを引っ張っていける」という素養を十分に持っている。

 DeNAはTBSホールディングス(HD)との売買交渉を終え、4日に日本野球機構(NPB)へ加盟申請した。この前後から水面下で新チーム作りに着手。チーム編成の全権を握るゼネラルマネジャー(GM)として、日本ハムでGMを務めた高田繁氏(66)に要請する方針を決めた。監督についても複数の候補を挙げながら検討した結果、工藤を最有力候補として今後の交渉に臨む方針を固めた。

 同社の加盟承認に関しては、今日22日に都内ホテルで臨時実行委員会が開かれて協議される。楽天などパ・リーグの球団から、同社の参入に反対する声も出ており、同委員会は慎重に審議していくものとみられる。DeNAはこうしたNPBの動きを見ながら、工藤へ就任を要請することになりそうだ。

 工藤にとって、横浜は3年間所属した古巣でもある。西武、ダイエー、巨人、横浜と渡り歩き、計14度のリーグ優勝、計11度の日本一を経験したものの、唯一、横浜だけ優勝できなかった。監督就任を受諾した場合、現役選手としてできなかった「横浜を優勝させる」という目標に再び挑戦する。4年連続の最下位に沈むチームの再建は、決して簡単ではない。新生球団が、どこまでチームをバックアップできるか不安要素も大きい。それでも「工藤なら…」と、期待を抱かせてくれる男ではある。

 ◆工藤公康(くどう・きみやす)1963年(昭38)5月5日、愛知県生まれ。名古屋電気(現愛工大名電)から81年ドラフト6位で西武入団。87年正力松太郎賞。93年に最優秀防御率と最高勝率を獲得しパ・リーグMVP。94年オフにFAでダイエー移籍。99年にダイエーを初優勝に導き2度目のMVP。00年2度目のFAで巨人移籍。07年に門倉のFA移籍による人的補償で横浜移籍。10年には西武に復帰したが、1年で退団。今年はどこにも所属せずトレーニングを続けてきた。最優秀防御率4度、最高勝率3度、最多奪三振2度、ベストナイン3度、ゴールデングラブ賞3度。左投げ左打ち。家族は夫人と2男3女。