前西武の工藤公康投手(48)が8日、現役引退を表明した。今季は無所属で練習してきたが、痛めた左肩の状態が思わしくなく、悩みに悩んだ末に決断した。プロ30年目に区切りをつけ「投げられないことが一番の理由。後悔はあるけど、できなかったことは野球選手を目指す子どもたちに伝えたい。恵まれた野球人生だった」と振り返った。

 この日、都内で行われた文化放送のイベントに出席。来季から野球選手ではなく、同社の解説者として再出発することを明言した。昨年西武を戦力外となり、最後の夢として年明けのメジャー挑戦を目標にしてきたが「やるだけのことはやった。子どもが5人もいなかったら、とっくにやめてたと思う。父親が野球をしている姿がわかるまでやりたかった」。肉体、心身の限界に挑んだのは、最愛の家族が原動力だった。

 今後は野球伝道師となり、指導者としてアカデミー創設の夢もある。今年、力を入れた被災地支援の野球教室にも「継続してやりたい」と意欲的だ。横浜DeNAの初代監督就任は消滅したが、延べ5球団を渡り歩いて通算224勝を挙げ、プロ最多の実働29年。記録にも記憶にも残った鉄腕が、ユニホームを脱いだ。

 ◆工藤公康(くどう・きみやす)1963年(昭38)5月5日、愛知県生まれ。名古屋電気(現愛工大名電)から81年ドラフト6位で西武入団。93年パ・リーグMVP。94年オフにFAでダイエー移籍。99年2度目のMVP。99年オフに2度目のFAで巨人移籍。07年門倉のFA移籍による人的補償で横浜移籍。10年、西武に復帰。ベストナイン3度、ゴールデングラブ賞3度。左投げ左打ち。家族は夫人と2男3女