これで悩み解消じゃ!

 広島の新外国人ニック・スタビノア外野手(29=3Aメンフィス)が1日、初のランチ特打で“驚弾”を連発した。55スイングで17本の柵越えを見せ、首脳陣を納得させた。あいさつ回りで訪れていた阪神木戸克彦球団本部付(51=前ヘッドコーチ)も「最近の広島にはいなかったバッター」と警戒。昨季のチーム本塁打52本はリーグ最少。右の大砲が、カープの野球を変える。

 “大当たり”の予感だ。誰もがニックの打球に見とれてしまった。腕前初披露となったのはランチ特打。昨季の3Aで放った28本塁打はフロックではない。2スイング目でいきなり、左翼ポール際にぶち込むとホームラン劇場が始まった。

 55スイングで17本の柵越えを量産した。24スイング目は、反応しないボールボーイに向かって「危ない!」と注意の声が飛んだ。だが、打球は弾丸ライナーでバックスクリーンに着弾した。44スイング目は、左中間の35メートルの防球ネット中腹に突き刺さる推定140メートル弾を放った。強烈なデモを披露しながらも、本人はいたって冷静に振り返った。

 ニック

 強くスイングすると言うよりは、しっかり芯をとらえて、振り抜こうと思っていた。柵越えは狙ってないし、数えてもない。芯でとらえた結果だよ。理想の打撃は、バックスピンをかけて強く打ちたいと思っている。滞空時間が長いに越したことはない。

 ライバル球団の注意を引くには十分だった。あいさつ回りに訪れていた阪神木戸前ヘッドコーチも、新助っ人の特打を目にした。甲子園もマツダスタジアムと同じく左方向へ強い風が吹く傾向がある。昨季は対戦成績は12勝12敗の五分。ポイントゲッターになり得る、右の長距離砲のパワーに警戒心を募らせた。

 阪神木戸球団本部付

 久しぶりに遠くに飛ばせるバッター。最近の広島にはいなかった。マツダは右からの風が強いから、右打者を取ったんだろう。

 チームは昨季リーグワーストの52本塁打にとどまった。3点差以内の試合は、108試合で44勝8分け56敗。接戦で抱えた借金12が成績に直結した。だからこそ、指揮官は5番起用を明言する助っ人を、悩み解消のキーマンに指名した。

 野村監督

 去年は1点差負けの試合が印象に残っている。3打席目までダメでも、1振りで変えてくれる選手になってほしい。

 キャンプ初日にして、好材料を見いだした。「3年間のすべてを集約したい」。その思いに応える“孝行息子”が現れた。【鎌田真一郎】