新ローテ左腕は下座がお好き!?

 ソフトバンク帆足和幸投手(32)が5日、宮崎キャンプで初のブルペン入り。自分のペースを守るため、他の投手が視界に入らない入り口近くのマウンドを選び、ボールにキスする勝負どころ限定の儀式も決めた。オーバーペース防止のため、予定の50球を29球に変更。帆足らしさ全開だった。

 まだ足跡のないブルペンに摂津と一緒に入った帆足は、迷いなく定位置を選んだ。7個あるマウンドでも入り口に近い、端っこ。新入りの礼儀ではない。「みんなに迷惑をかけずゆっくりやりたいので、あそこがいいんです。他の人を見ると合わしちゃうところもあるので」。左腕の帆足がセットポジションで構えると目の前にはブルペンの壁があるだけ。他の投手に挟まれる“センター”より下座の方が、自分のペースで投げられるというわけだ。

 西武時代からの流儀で山崎を立たせて14球を投げると、本番モードに入った。ホームベースに背番号11を向ける形でくるりと反転。顔を下げて精神統一し、おもむろにボールに口づけした。「大事な時にやっている」と、正念場のゲームや節目で行う特別な儀式で、スイッチオン。山崎を座らせて、セットポジションから下半身のバランスを意識して腕をしならせた。

 格好いい儀式の後も帆足らしさがあふれた。当初は合計50球を予定しながら、なぜか15球で終了。理由は「人がいっぱいいるし、オーバーペースになっても…」という自主規制だった。観客と報道陣や古巣西武、ロッテのスコアラーや球界関係者が詰めかける熱気にほだされないよう、冷静にブレーキをかけた。

 流儀を貫いた初ブルペンで存在感を見せた。通算75勝左腕に調整は任されており、高山投手コーチは「予定通りに来ているのではないのかな。自分のフォームを確認しながら投げていたね」と信頼を寄せていた。

 FA移籍し、新しい仲間と出会って1週間。自他共に認める人見知りは「山崎さん、いや山崎君だったので力みました。いいキャッチャーなんで、初めてで緊張した」とブルペンデビューを振り返った。3歳下を「さん付け」するなどまだ不慣れな部分はある。それでも、キャンプに持ち込んだ通信対戦ゲーム機に加え、家庭用ゲーム機とソフトも新たに購入。「みんなでできるといい」とコミュニケーションをとろうと懸命だ。グラウンド以外でも帆足流を貫いている。【押谷謙爾】