<練習試合:日本ハム9-7DeNA>◇16日◇名護

 期待を抱かせる敗戦だった。中畑清監督(58)が率いるDeNAは16日、初の対外試合で日本ハムと対戦。先制を許すも、期待の筒香嘉智内野手(20)内藤雄太外野手(28)ら若手の活躍で4点を奪い、相手先発の斎藤佑樹投手(23)を攻略した。盗塁、エンドランと目標に掲げる機動力野球も実践し計7得点。終盤に逆転を許し、初勝利こそ逃したが、中畑監督は「私の中では評価したい」と笑顔を見せた。4年連続の最下位という低迷からの脱出へ向け、新球団が手応えあるスタートを切った。

 ベンチの奥で戦況を見守っていた中畑監督が、初めて身を乗り出した。1点を勝ち越した直後の3回2死二塁。内藤が、斎藤から左中間席へ2ランを放った。リードを3点に広げ、ようやく動いた。内藤とハイタッチすると、直前に勝ち越し打を放っていた筒香とタッチ。離れていこうとする筒香を、もう1度呼び戻して頭をひとたたきした。

 監督としての初陣で、成長過程の若手がどんなプレーをするか。楽しみと同時に不安もあった。しかし、梶谷、石川、筒香、内藤と期待の若手が結果を出して逆転。「(3回を)9の0でいきたい」と完全投球を目標に掲げていた斎藤を打ち崩した。確かな手応えを感じた瞬間だった。「佑樹さん、ありがとう。ベイスターズにとって、勇気ある4点になりました」。試合後は笑顔で逆転の場面を振り返った。

 試合中は、ほとんど笑わず、ベンチ右隅に居続けた。練習のような派手なアクションはなし。意識して声も抑えたのは「試合は選手たちが輝く舞台だから」という思いがあった。冷静な目で、選手を見つめていた。

 就任から明るいキャラクターで、話題を独占してきた。選手より目立つ新監督。多忙を極めていた昨年末、自宅近くのサウナで話したことがある。「シーズンに入ったら、選手が目立たないといけないんだよ。それまでは俺が盛り上げてな」。試合になれば選手が主役。まだ知名度も低い若手が目立つことは、何よりうれしいことだった。

 荒波、梶谷の俊足コンビが盗塁を決めた。「悪いときほど仕掛けた方がいい。悪いときほど仕掛けなかったら、その空気は変わらない」と話す機動力の意味。厳しいシーズンでの起爆剤と考えるからこそ、初戦から実践してみせた若手に、光るものを感じた。

 もちろん喜んでいられる状況ではない。「絵に描いたような失点」と振り返った通り、逆転を許した投手陣は大きな不安。4年連続最下位チームが、簡単に立て直るわけではない。それは中畑監督も十分に理解している。だが、未熟ながらも戦う姿勢を見せた選手たちに、希望を見いだしている。

 「この先、順調にいいイメージでいくことはない。でも元気な勢いを1年間出していくのがうちのテーマ。最後まで元気と諦めない姿勢が出たのは評価したい」。初陣でつかんだ手応えを、勝利という形につなげていきたい。【佐竹実】