巨人宮国椋丞投手(19)が“神様”からの金言で大躍進へ足がかりをつかんだ。宮崎春季キャンプ第4クール2日目の17日、長嶋茂雄終身名誉監督(75)が2年ぶりにキャンプを視察。注目の選手として宮国の名前を挙げた。明日19日のオープン戦・阪神戦先発に向け、ブルペンで57球を投げ込んだ若きホープは「神様のような存在」というミスターから、「あまりフォームを気にしないで思いっきり投げなさい」とアドバイスを受けた。

 「今日の一言で吹っ切れました」。宮国が晴れ晴れした表情で言い放った。ブルペンでの投球練習を終えると、ネット越しで見守っていたミスターのもとに向かった。帽子をとり、直立不動で初対面した。「今、誰と話しているんだろうって、感じでした。話していることが自分にとっては考えられないことでした」。宮国は緊張の度合いを越していた。そんな弱冠19歳の期待の新星にミスターは優しく語りかけた。

 「あまりフォームを気にしないで自分の球を思いっきり投げなさい」

 常に悩みは絶えなかった。プロ2年目で初の1軍キャンプスタートを勝ち取り、実戦形式の練習でも結果を出してきたが、周囲の期待と比例して想像をはるかに超える重圧がのしかかった。軸足の右足にしっかりと体重を乗せて、シンプルで美しい投球フォームに迷いが生じていた。9日のフリー打撃登板では左足を上げてから地面に着地するまで平均1・92秒だったのに対し、16日のブルペンでは平均1・76秒。軸足に長い時間体重を乗せるという最大の長所の微妙なズレが、数字に表れていた。

 キャンプ3日目で、慣れない環境での緊張からか体調を崩し一時離脱。復帰後も首脳陣からの指導も自身の中で思うように消化できず。頭の中のモヤモヤは日に日に拡大し「考えすぎていました」と、素直な胸の内を明かした。だが、ミスターからの金言で心境は一転し、本来あるべき姿を思い出した。

 「プレッシャーは感じていません。僕はまだ、そこまでの選手じゃない。自分がやるべきことをやるだけです」

 宮国が産声をあげた92年オフ。「第2次・長嶋政権」が幕を開けた。そんな2人の関係に何かの縁すら感じる。親子以上に年が離れた“神様”からのアドバイスが何よりも励みと自信になるはずだ。もう、迷いはない。【為田聡史】