全速力で追いかける中堅・俊介の快足にも負けなかった。阪神金本知憲外野手(43)の打球は低い弾道で左中間を襲った。二塁にゆっくり到達すると金本は穏やかな笑みを浮かべた。この打球がほしかった。

 17日は今キャンプ2度目のシート打撃。前回14日は1年の「初打席」で秋山から中前打。今回は安藤の外角高め、142キロを捉えた。右腕をきっちり伸ばし、左手でボールを押さえ込む。打球はスライスも失速もせずに中堅の頭を越えた。

 10年3月に右肩棘(きょく)上筋断裂の重傷を負って以来、右腕を伸ばせず、得意としている左方向への強い打球を打てなくなった。「左に長打」は復活への一大テーマ。この日もドーム内に居残って約1時間も「左」に打った。成果はジワリと表れている。2打席目も安藤から痛烈な三ゴロ。3打席目はメッセンジャーの前に二ゴロに倒れたが、捉えた打球だった。

 快調なペースで仕上げてきた。天候や状態次第で19日の巨人戦(沖縄セルラー那覇)の出場も視野に入れる。2月中の試合出場なら10年ぶりだが、和田監督は「今日のスイングを見ているとあり得る。3打席とも内容がいい。去年はあの方向に打てなくて苦しんだが、それを見せてくれた。戻っているよね」とGOサイン。近日中にも打席に立つ。

 球場を訪れた野村克也氏からは「オレは45歳でやめたから48歳までやれよ」と激励された。4月で44歳。選手寿命のバロメーターはグングンと上昇している。【柏原誠】