<東日本大震災復興支援試合:日本代表9-2台湾代表>◇10日◇東京ドーム

 侍ジャパンのエースが、震災復興への思いを胸に力投した。田中将大投手(23=楽天)が、台湾戦(東京ドーム)に先発。初回、潘武雄に1発を浴び「悔しい」と唇をかんだ。今日11日で東日本大震災から1年になる。忘れられない日。決して忘れてはならない日。完全投球とはいかなかったが、エースナンバー「18」を背に、被災地へ、日本中へ全力投球を届けた。スタンドに被災者3785人を招待して行われた試合は9-2で日本代表が快勝し、今年から常設された侍ジャパンの初陣を飾った。

 1球1球に思いを込め、田中は投げた。投球練習から威力のある直球。投げるたびに球場は「オォー」とどよめいた。歯を食いしばり、腕を振った35球。2番の潘に本塁打を浴びたが、最後の打者との対戦で最速147キロをマーク。気持ちを切らさなかった。「今日の試合の意味を自分なりに考えて登板しましたが、本当に情けないです。力を出すことができなかった」と唇をかんだが、最後まで全力投球でファンを魅了した。

 前に進もう。そのメッセージを「言葉」と「姿」で示してきた。2月の久米島キャンプ。投手陣の声だしで「今シーズンは震災復興元年という年でもあり、東北のみなさんに明るい話題をたくさん届けられるように、チーム一丸となって戦っていきましょう」と言った。声だしを行ったメンバーで唯一、復興への思いを表現した。「他の人が言った、言わないじゃなくて、僕がそう思ったから言ったんです」。素直な自分の意思だった。

 行動も自ら起こしている。昨年の震災から3週間もたたない3月末に「長期的な支援が必要」と自分の意見を示した。初めて経験した未曽有の出来事にも、正面から向き合っていた。昨年は募金活動などチームとして支援活動を行った。シーズン後の契約更改の場で1年を振り返り「また、どこかで(支援活動が)できたら」と話した。詳細は明かしていないものの、チームとしてだけでなく、個人としての支援活動を行うことを決めている。時がたっても忘れてはいけない。その思いが「長期的」という田中の考えにつながっている。

 今季も被災地のファンを球場に招待する。「見ている方が何かを感じてくれれば。ひたむきに全力でプレーすること。それが大事だと思います」。18番を背負い、腕を振り続ける。その姿を見せることが東北、そして全国のファンへのメッセージでもある。今年の楽天のチームスローガンは「ともに、前へ。」。復興のため、一緒に戦う。田中は「復興までまだまだ時間がかかると思いますが、このことを忘れないで、(今後も)みんなで何かをやっていきたい」と支援していくことを訴えかけた。愚直な東北への思いは、きっと伝わっている。【斎藤庸裕】