<巨人0-4ヤクルト>◇30日◇東京ドーム

 快勝の秘密は1、2番にあり。ヤクルトが巨人の開幕投手内海に12安打を浴びせて攻略した。東京ドームでは対ヤクルト10勝無敗だった天敵の壁をぶち破ったのは、3安打の1番田中と2安打の2番上田の「並び」にあった。

 試合開始の28時間前、これが「理想の1、2番の仕事」と、誰よりも強く想像していたのは、小川淳司監督(54)自身だった。

 ここまで東京ドームでの対戦0勝10敗だった内海に対し、3回無死一塁から「1番田中」が2球目の136キロ内角直球を引っ張った。左翼線を抜き、無死二、三塁とチャンスを広げる。「2番上田」はスライダーをバットの先ですくい上げて中前に落とした。狙い通りの2点先制劇に、小川監督は「今日は良かった。よくつながってくれた」と称賛した。

 前日29日の正午、指揮官は東京ドームでの練習前に「巨人3連戦は田中、上田で行くことにしました」と宣言した。1番田中、2番上田の新オーダー。本来は俊足の上田が1番で、昨季の犠打王田中が2番を打つのが定石だった。小川監督は田中と内海の相性に着目。昨季は6割2分5厘、通算3割6分4厘を誇っていた。仮に「1番上田」が出塁しても、クイックが速い内海なら単独盗塁は難しい。田中は犠打になる。それは最善の策なのか。

 「内海VS石川」。勝つには3点勝負と読んで、1、2番でいかに出塁するか「定石の逆」を選択した。田中は1回の第1打席で内角への141キロ直球を中前に運んだ。上田のバントが内野安打になって無死一、二塁。3番に据えた新外国人ミレッジの初打席で、いきなり2球バントのサイン(最終的には三振)を出したのも、1、2番がつくったチャンスを何とか生かす狙いがあった。

 チーム力で戦うヤクルトが、巨大戦力に立ち向かうには開幕ダッシュが欠かせない。小川監督は「本当に力のあるチームは後半でも巻き返せる」と常々ライバルを警戒する。開幕戦を144分の1とはとらえず、とことん目先の1勝にこだわった。今季から導入された予告先発で、内海は100%。昨年までの予想では99・9%まで読めても、メンバー交換までは確実ではない。「対内海」に絞って考え抜いたことも、昨年までとは違った心理戦だった。

 田中は「監督が期待して起用してくれたし、その期待に応えたかった」と言った。2点先制した直後の3回無死一塁では、上田が盗塁を狙ったが、速いクイックと阿部の送球で刺された。チャレンジした上田にとっては苦い結果だったが、小川監督の選択が正しかったことを裏付けるワンプレーだった。【前田祐輔】