<巨人5-1中日>◇11日◇東京ドーム

 やっと出た。3-1で迎えた8回、巨人村田修一内野手(31)が今季チーム1号、自身移籍1号本塁打を左翼へ運んだ。開幕から11試合目、打者のべ390人目に待望のアーチが飛び出した。2リーグ制度下での球団史上ワースト記録に終止符を打つ一打で、中日に快勝。引き分けを挟み、今季初の連勝で、原巨人の投打がようやくかみ合い始めた。

 この瞬間を待っていた。2点リードの8回1死二塁。村田が、小林正の内角低めスライダーにくるりと体を回転させた。「狙ったというよりも反応した」。乾いた打球音を残した打球は、一直線で左翼ポール際へ。「打った瞬間に本塁打と思った。当たりも完璧だった」と白球の行方をじっくり見るまでもなく、ゆっくりとベースを1周した。

 試合を決定づける移籍第1号2ランは、今季の巨人初アーチ。この試合もノーアーチなら、1リーグ時代の38年春に並ぶ11試合連続不発というワースト記録だった。「皆さんが望んでいた通り、第1号が出て良かったです」。8日阪神戦で連続イニング無得点を31で止めた男が、またもや不名誉記録をストップさせた。

 「新しい村田修一を見せられるかもしれない」。巨人移籍後、こう語ったことがある。本塁打王2度の主砲は、横浜(現DeNA)時代は「ここで1発なら2点」などと考えることもあった。だが巨人では「他に打つ人はいっぱいいる」と力みは減った。そこで、新たな命題にぶつかる。「自分の役割は何なのか」。

 開幕前のある日、長男閏哉(じゅんや)君が野球ゲームに熱中していた。試合は横浜対オリックス。昨年度のゲームのため、村田は横浜の4番だった。だが、長男は「僕はね、パパにホームランを打たせずに三振取るのがうまいんだよ」とオリックスを操作し27-8で大勝。伝え聞いた村田は苦笑いするしかなかった。

 実際は、自分以外はパパを抑えられないと言う長男は、いつも「本塁打を打ってきてね」と送り出してくれる。だが、ここ最近はおとなしかった。「気を使ってくれているのかな」。5日に小学校に入学した長男の姿に「僕も頑張らないと」と奮起していた。強力打線に囲まれるだけに、家族、チーム、ファン…誰もが「ここ」と願う時に勝利に貢献できるのが巨人の主軸の務めであり、自らの役割と悟った。大歓声に包まれ、「巨人ファンに喜んでもらえて光栄」と実感した。

 試合前、笑いながら言っていた。「何で僕に第1号を期待するんですか?

 期待しない方がいいですよ」。だが、日々の打撃練習で、バックスイングや足の上げ方を変えながら「良くするために、引き出しを増やしたいんです」と貪欲に野球に打ち込む姿がある。「毎年に比べると第1号は遅かったけど、まだまだシーズンは長い。1本でも多く打っていきたい」。巨人村田として、新たな1歩を踏み出した。【浜本卓也】

 ▼村田の移籍1号が飛び出し、開幕から続いた巨人の本塁打0は10試合でストップ。そのシーズンに巨人へ移籍した選手がチーム1号を放ったのは、48年青田(前阪急)51年平井(前西日本)65年金田(前国鉄)66年田中(前西鉄)08年ラミレス(前ヤクルト)に次いで6度目だ。村田にとって出場11試合目の1号は横浜時代の05、09年の6試合目を抜いて最も遅いが、この1発で巨人は1リーグ時代の38年春に記録した開幕11試合本塁打なしの球団ワーストタイを免れた。