<阪神4-3ヤクルト>◇19日◇甲子園

 虎党のみなさん、お待たせしました。JFK以来、固定できなかった勝利の方程式が固まりました。ヤクルト戦で7回を抑えたのは9年目の筒井和也投手(30)。3人で仕留めて8回の榎田、9回の球児とつなぎ「TEQ」を完成させました。1点差を守り抜き、逆転で首位を死守。優勝するまで、簡単に失点は許しません!

 マイクを持てば人気バンドのMr.Childrenにそっくりと激賞される筒井は「シーソーゲーム」が得意だ。といっても、カラオケでのヒット曲ではない。互いに点を奪い合い、二転三転の展開になった。白熱した甲子園でセットアッパー左腕の本領を発揮した。2点を奪って逆転した直後の7回に登板。リードはわずか1点だが、緊張と無縁の投球術が光った。

 まずは先頭中村を惑わせる。チェンジアップを連投し、3球勝負。完全にタイミングを外す115キロのチェンジアップで空を切らせた。代打新田には直球で空振り三振。田中は遊ゴロに仕留めて鮮やかに3者凡退だ。敵の追撃ムードを断ち、これで3試合連続完全救援。和田監督も自ら切り出して絶賛した。

 「7回の筒井がいい仕事をしてくれている。流れを断ち切るマウンドでの姿が非常に良かった。これからもやってくれる。どちらかと言うと、右左を苦にしない。もうオドオドするところもない。これからもやってくれる」

 分岐点の7回は右打者から始まる攻撃だった。それでも迷わず筒井を投入。8回榎田、9回藤川と継投して白星を導いた。必勝リレーの確立は優勝するチームに欠かせない。渡辺や福原も控えるが、筒井(T)、榎田(E)、球児(Q)の「TEQ」トリオ結成が見えてきた。

 「信頼して使ってもらっている。自分の力を信じて投球しようと思ってます。(ヤクルトと)1勝1敗で今日は大事な試合だった。自分の仕事をするだけ」

 2月の沖縄キャンプ。ブルペンでは投げ込みよりもコンディションを重視する調整法を貫いた。藪投手コーチに「ブルペン、入っていないなあ。それでもいいぞ」と言われ、自信も保った。筒井には発奮する言葉がある。開幕当初、和田監督から「流れを断ち切る投球、流れをこっちに持ってくる投球をしてくれ」とエールを送られた。この日のシーソーゲームはまさにセットアッパー冥利(みょうり)に尽きる展開。試合中、ブルペンでは対戦相手を想定してチャート表などデータも確認する。細心の注意が実った瞬間だった。

 筒井は言う。「真っすぐで、腕を振れている。打者が真っすぐをマークしてくれてチェンジアップが効いている」。今季は威力のある直球を軸に用い、奪三振を量産する。鳥谷と同期の03年自由枠で入団。勇敢な左腕も和田阪神に欠かせない一員になった。【酒井俊作】