<DeNA4-3阪神>◇21日◇横浜

 喜び爆発、怒りも爆発のキヨシ劇場で、DeNAが阪神に連勝した。中畑清監督(58)は、4番ラミレスの8試合ぶりの適時打に歓喜したかと思えば、本塁クロスプレーの微妙な判定には血相を変えて猛抗議。監督の勢いに押されたチームは、1点差の接戦をものにして、本拠地2連勝を飾った。勝利から約3時間後、巨人がヤクルトに敗れたため最下位を脱出した。

 飛び出さずにはいられなかった。5回1死一塁。荒波の右二塁打で、一塁走者の一輝が一気にホームに滑り込んだ。捕手のタッチより一瞬早く、セーフかと思われたが判定はアウト。中畑監督はホームベースを指さしながら猛ダッシュ。身ぶり手ぶりを交えて、猛抗議した。「あれはセーフじゃない?

 あれがアウトかセーフじゃ大きく違う。久しぶりに血管3本くらい切れたんじゃないかな。いや、切れましたね。(球審の)工藤君の鼻の頭にかみついてやろうかと思ったよ」。初の抗議を、興奮冷めやらずに振り返った。

 本拠地初勝利を飾った直後の試合、中畑監督は連勝に執念を燃やしていた。広島3連戦の3連敗中、ベンチ内にもっとも危ぶむ雰囲気を感じた。リードされると重い空気が漂い、チーム再建のテーマに掲げる“最後まであきらめない姿勢”を失いかけていた。少し負けると、球団内に染み付いた負け犬根性が出てきてしまう。中畑監督はもう1度、キャンプイン時のように、開幕時のようにチームを活気づかせたかった。

 「連勝でチームにいいクセ、いいリズムが出てくると、あきらめない野球ができるようになる。勝つことがすげえ薬なんだよ」。だからこそ、全身で喜怒哀楽を表しチームを鼓舞した。勝利に対する執着心が、大げさなほどのパフォーマンスとして出た。

 4回には同点適時打で三塁へ全力疾走するラミレスに対し、ベンチ最前列に飛び出し、腕を振り回してゲキを飛ばした。「チームに勢いをつけてくれた。三塁打とかは気持ちが乗っちゃうんだよ」。この日の試合前、ラミレスを呼び止め、守備固めで途中交代を命じる展開が多いことについて説明した。「今のチームに勝ち越されたら逆転するパワーはない。苦肉の策で苦渋の決断ということを伝えた」。

 ラミレスは守備に難があるだけに当然の策だが、本調子ではない主砲に一点のわだかまりも残したくなかった。8日以来となる複数安打で勝利に貢献したラミレスは「監督は勝つためにベストの決断をしている。与えられた役割の中で100%の仕事をするだけ」と、監督の意をくみ取っていた。

 試合終了から約3時間後、巨人が敗れ最下位を脱出した。だが、中畑監督は「最下位争いだ!

 バカヤロー!

 最下位が定位置のチームだから、相手を見る余裕なんか、まだない」と意に介していない。目標は5位じゃない。本拠地での連勝で中畑DeNAが再び活気づいた。【佐竹実】

 ◆中畑監督と阪神戦

 現役時代から阪神戦の相性が良かった。中畑監督は2年目の77年7月31日にプロ初安打を記録しているが、この時の相手が阪神戦で山本和から。79年5月1日にマークしたプロ初本塁打も阪神の益山から。現役時代に通算171本塁打しているが、カード別の本数は阪神戦41本、中日戦34本、ヤクルト戦34本、広島戦32本、大洋戦30本と、阪神戦が最多。監督1勝目も阪神戦で、このカードは3勝1敗1分けと勝ち越している。