<オリックス0-1日本ハム>◇22日◇ほっともっと神戸

 日本ハム陽岱鋼外野手(25)のスタートに一切の迷いはなかった。0-0で迎えた8回1死三塁の好機。鶴岡の打球は中堅への浅い飛球も、三塁走者の陽はタッチアップ。唯一の得点となる決勝点を生んだ。「外野フライは全部いこうと思っていた。積極的にいきたかった」と陽岱鋼。1つ間違えれば暴走だが、栗山監督は「岱鋼らしさを出してくれた」と褒めた。陽岱鋼らしさ。それは走力だけではなく、むしろ度胸を指している。

 もともと陽岱鋼は失敗を恐れない。普段からケガを恐れることなく、ダイビングをし、フェンスに激突する。シーズン中、アザや擦り傷は絶えない。

 プレーだけではない。15歳で台湾から日本の高校に進学したが、日本語が理解出来ないころから友人とカラオケに興じていた。まったく気後れせずにコミュニケーションを図り、1年間でほぼ日本語をマスターした。極め付きはプロポーズ。台湾で行われたチャリティー試合の会場で、ファンが見守る前で愛を告白した。度胸、思い切りの良さで道を切り開いてきた。

 加えて、その度胸を生かす土壌が日本ハムにはある。1月に沖縄・名護で稲葉、金子誠、田中、鶴岡ら並み居る先輩と自主トレを行った際、陽岱鋼は朝寝坊で練習に遅れた。遅刻対策として一緒に朝食を取ることになっており、食事会場には顔を出していた。だが、食事を終えて自室に戻った直後、再び夢の中に入っていったという。本来ならば怒られて当然だが、稲葉らは「アイツらしい」と笑っただけ。諸先輩の中に入っても気後れしていないところを、長所と見てやった。

 投手戦の中で奪った重い1点。陽岱鋼が一瞬でもスタートを迷ったら、ホームには届かなかっただろう。抜群の身体能力から生み出される走力と、思いきりのいい度胸、そして失敗を叱責(しっせき)しないチームカラー。これらの要素が合わさり、奪った決勝点だった。【本間翼】