<楽天0-4日本ハム>◇29日◇Kスタ宮城

 日本ハムの武田勝投手(33)が楽天5回戦で相手打線を2安打に封じ、わずか96球で今季2度目の完封勝利を飾った。序盤は3四死球と制球を乱したが、中盤以降に立ち直り、ソフトバンク摂津、ロッテ唐川と並んでリーグトップの4勝目を挙げた。開幕から負けなしの4連勝。無敵の技巧派左腕が、3・4月の月間MVP最有力候補に躍り出た。

 プロ7年目、自身初の栄誉にぐっと近づいた。間もなく発表される3・4月の月間MVP。自身3度目、そして今季2度目の完封劇で、開幕から無傷の4連勝となった日本ハム武田勝には、十分にその資格がある。今季5度目の登板は、技巧派左腕の“技”がたっぷり詰まった試合となった。

 序盤は直球で押し、中盤以降は変化球で幻惑した。思い描いた通りに、96球で試合をプロデュース。2回に2四死球で1死一、二塁と珍しく制球が乱れてピンチを迎えたが、絶妙なけん制で二塁走者の牧田を刺し、ギアが入った。「普段は出さないプレー。嫌な流れを切るという大きな意味があった。けん制死の後から、力まないで、しっかりコースを突くことができたし、自分のリズムで投げることができました」。4回は、わずか3球で中軸の右打者3人を料理。3球すべて、外のチェンジアップだった。

 球種が多いわけではない。武器と言えるチェンジアップとスライダーは、ほぼ腕の振りが一緒。それだけでなく、球速もほぼ同じというのがポイントだ。「力むと(2つの球種に)スピード差が出てしまう。同じようなスピードで投げることが、いいバロメーターになっています」。違うのは、打者の手元で変化する軌道だけ。同じ腕の振りから投げ分けられる、同じようなスピードの2つの魔球に楽天打線は右往左往した。

 シーズン2完封は自身初。完投ですら4試合以上経験したことがなかったのが、今年はハイペースで投球回数を増やしている。調整期間に必ず行う捕手練習。中嶋バッテリーコーチの指導のもと、股関節の柔軟や下半身強化のために週1度、地獄の特訓を受けている。「長いイニングを投げて疲れてきた時にも、下半身を使って投げられるように。効果は感じています」。普段のポーカーフェースが崩れ、うめき声をあげるほどつらい練習をこなすことで投げる体力を培ってきた。「今年は少しでもイニングを投げようという自覚もあって、それがいい方向へ出ている」。

 技だけでなく、力強さも手にしつつある背番号38。無傷の連勝は、どこまで続くか。【中島宙恵】

 ◆日本ハムの月間MVP

 04年の本拠地移転後、投手部門で6人(延べ10度)、野手部門では稲葉、セギノール、小笠原、新庄ら8人(延べ12度)。投手部門ではダルビッシュが最多5度、野手部門では稲葉が最も多い4度。3・4月度は04年セギノール、08年ダルビッシュが受賞しており、武田勝が栄冠に輝けば4年ぶり。今年の3・4月は、野手部門で稲葉も有力候補となりそうで、投手&野手のダブル受賞なら、09年5月のダルビッシュ&稲葉以来となる。