<ロッテ7-9日本ハム>◇8日◇QVCマリン

 日本ハムが難攻不落のロッテ・グライシンガーを打ち崩し、首位攻防3連戦を先勝した。1点を追う6回、小谷野栄一内野手(31)の左翼線二塁打を口火に、5者連続安打を含む7安打を集中して難敵をKO。さらに安打を重ね、この回、打者14人の猛攻で一挙8点を奪って試合を決めた。リーグ防御率NO・1右腕に対し、栗山英樹監督(51)は徹底分析から2つの攻略ポイントを掲げていた。

 大胆かつ丹念に、難敵を陥落させた。日本ハムの描いた青写真が、はまった。ロッテとの首位攻防3連戦初戦の最大の焦点に設定したのは、グライシンガー対策。1点を追う6回に5連打を含めて7安打を浴びせて一挙7点を奪ってKO。この試合前まで両リーグただ1人の0点台、防御率0・31の右腕を沈める鮮やかビッグイニングへとつながる伏線は、舞台裏に隠されていた。

 綿密に練ったプランは、2点だった。1つ目はシンプルに、特徴への対応だった。グライシンガーは野手の投げ方のように、右腕を素早く上げてトップの位置をつくって投げるフォーム。通常の投手よりもタイミングの取り方を工夫しないと、やや振り遅れがちになるパターンが多いと分析した。各打者へミーティングで順守事項として通達。栗山監督は「ヒミツ」としたが、これが軸になった。

 もう1点は、この日まで対戦打率1割2分3厘という右打者への攻略術だった。厚沢チーフスコアラーは「抑えている投手は基本的に打ち取るパターンを変えない。冒険はしない」と断定。7回1/3を1失点に抑えられた前回4月24日の登板と、他球団への投球内容をすべて洗った。右打者は外角の直球、カットボールで打ち取るという配球の偏りを利用し、あえて狙わせた。シュート系の球種がなく、内角は各自で対応可能と判断もしていた。

 6回、先頭打者の小谷野が初球の外角カットボールをファウル。2球目の内角球を左翼線二塁打し、ビッグイニングが始まった。無死一、三塁から中田も初球の外角高め134キロを強振。ミスショットしたが、同点の遊撃内野安打になった。そこまで凡退の2打席で計9球のうち8球が外角球。中田は「甘いボールがきたらいこうと思っていた」と、指示に忠実にバットを出した。

 2点を勝ち越し、なお無死二塁から陽岱鋼も初球、外角カットボールを遊撃内野安打。この右打者の2本は会心の当たりではなかったが、中堅より左方向への打球。始動を早くしたからこそ生まれた。厚沢スコアラーは「分析もいつも通り。要点を伝えただけ」と秘策ではないと強調したが、舞台裏の奮闘もあり快勝。攻略の事前ルールを順守した打者陣の献身さもシンクロして、完璧に標的を仕留めた。【高山通史】

 ▼日本ハムが両リーグ一番乗りで20勝に到達した。日本ハムの両リーグ最速20勝は、96年5月14日西武戦(東京ドーム)で記録して以来16年ぶり。チーム最速20勝は62年東映時代の23試合で、61、63年の同時代と09年は32試合、96、98、11年は33試合で到達している。今年の34試合はこれらに続いて8番目のスピード。