<巨人4-2オリックス>◇17日◇東京ドーム

 巨人坂本勇人内野手(23)が左足を大きく上げ、慣れ親しんだバットを手に、力強くスイングした。オリックス中山の外寄り直球を射貫いた。「感触がすごく良かった。たぶん今年1番」。打球の行方を見届け、ゆっくりとベースを回った。「久しぶりですね。うまくいい角度で飛んでくれた」。21試合ぶりの3号ソロが同点弾。初回の同点犠飛に続き、坂本が5連勝に導く一打を放った。

 坂本の打つ姿は、昨季と大きな変化はないように見える。だが根幹に、試行錯誤の積み重ねがある。2月、バットを5年ぶりに変更。「やってみようと形を変えてみました」。約1センチ短く、中間部を細くした。その形状はヘッドが走る。つまり、より遠心力が生じ、強い打球を打ちたい時に手にするという。「良いタイミングで強いスイングができるか」。それは、今季のテーマに重なっていた。開幕後に元のバットに戻したが、「感触が良くなってきました」と復活の手応えを得ていた。思い切ったモデルチェンジで違う道具を扱い、5年間慣れ親しんだバットの操縦法を、再認識できたのかもしれない。

 代名詞の「1本足」にも、紆余(うよ)曲折があった。キャンプ時から「どうすれば打ちやすいか。実戦では試せないから」と、すり足打法に取り組んだ。構えの位置、角度、変更と工夫を繰り返した。バット同様、元の形に行き着いたが「すり足は生きていると思います」と断言した。

 考え方も変わってきた。3番として「本塁打は意識しないで、次の打者につなぐ意識で、何とか流れを変えたい」と、31発を記録した10年のイメージを断ち切った。つなぎを意識しながら「自分のスイングができるか」に集中できている。だからこそ、第2打席での大ファウルも「良い感じで振れてるなと思っていました」と本塁打の予兆ととらえず、フォークをうまく拾った最終打席の左前打を「あれは良かったですよね」と一番喜んだ。「強い打球を打つ」ための勇気ある試行錯誤が、結果として表れ始めている。【浜本卓也】