<広島1-0日本ハム>◇19日◇マツダスタジアム

 「佑祐対決」プロ野球編の第1弾は、1年後輩の広島野村祐輔投手(22)に軍配が上がった。7回5安打で毎回のようにピンチを迎えたが無失点に抑え、6回1失点の日本ハム斎藤に投げ勝った。大学時代は東京6大学リーグの注目カードで、先発対決は1勝3敗。4月29日ヤクルト戦以来の3勝目は、大きな1勝になった。

 お立ち台での言葉が野村の素直な気持ちだった。

 野村

 学生のときから憧れの先輩だった斎藤さんに勝ててうれしいです。

 「斎藤VS野村」を目の当たりにした3万1803人の観衆が再び大きくわき上がった瞬間だった。

 ピンチになってからが、真骨頂だ。6回2死三塁で陽岱鋼を三振に仕留め、体を回転させながらガッツポーズ。7回1死一、二塁から糸井を二ゴロ併殺打に打ち取ると、こぶしを握りしめた。表情を変えない新人右腕がマウンドで感情をあらわにした。斎藤を意識するあまりに自然に出た。「気持ちが入っていました」と振り返る。いずれも外角低めに制球されたチェンジアップ。2回1死三塁ではセンスの高さを発揮した。飯山のスクイズの気配を察知し、自ら低めに外して失点を防いだ。

 7イニングゼロを並べてみせた。大学時代の先発対決は1勝3敗。エースとして投げ合い、苦い思いだけが残っていた。プロに場を変えて、10年9月25日以来の対決を制した。「学生のころは負けていたので新しいステージでチャンスを生かしたかった。勝てて良かった」と素直な胸の内を明かした。

 精度の高い制球は、自らの体を知ることから生まれた。広陵高時代、好投した直後に野村はチームトレーナーを担当している山西裕恵さんに「体を見てほしい」と尋ねた。「好調のときの筋肉や関節の可動域を見たかった」。意識の高さのたまものだった。

 走者を出しても、制球と粘りでライバル対決に勝った。「走者を出してしまったのは仕方ないと思ったので次を抑えられた。冷静だった」。まさに成長を見せつけた1勝。表情をめったに変えないルーキーにとって、単なる1勝ではない。【中牟田康】