<阪神2-3楽天>◇19日◇甲子園

 笑顔なき勝利だ。楽天塩見貴洋投手(23)が阪神1回戦で6回1/3を3安打1失点に抑え、リーグトップタイの5勝目を挙げた。2-1の7回1死走者なしで、関本に四球を与えた時点で降板を命じられた。球数は100球にも届いておらず、課題の四球を出したことが理由。憧れだった甲子園での初勝利は手にしたが、反省も残った。

 まだまだ、力は余っていた。1点リードの7回1死、塩見は阪神関本に四球を与えてしまった。同点の走者を出した。94球で交代を告げられ、表情をこわばらせた。口元をキュッと結び、マウンドを降りる。ベンチで控え選手たちがハイタッチをしてくれたが、笑みはこぼせない。無表情のまま後を継いだ投手陣の応援に回るしかなかった。リーグトップタイの5勝目は挙げた。高校からの憧れ甲子園でヒーローインタビューに呼ばれたが「もっと真剣にいかないといけなかった。四球で交代…。悔しいです」と正直だった。

 星野監督の意図は明確だった。「毎度、おなじみだな。ホームランのないセキ(関本)に」と半ばあきれ顔。これで今季は8試合に登板し、無四球は1試合だけ。計53回1/3で19与四球と、1試合平均3・2個を与えている。監督は四球を最も嫌う。ローテーションを任せるには不満の残る内容だった。

 厳しい言葉は期待の裏返しでもある。塩見が自ら反省点を口にしたのは次につながるはずだ。自分の課題を見詰め、真摯(しんし)に取り組めるのが長所。3敗目を喫した6日のソフトバンク戦では、自己ワーストの1試合3本塁打を食らった。「調子が悪かった」という。この日も「調子が悪かった」。ただ、1発を打たれないよう「自分なりに考えて投げました。調子が悪い中でも、低め、低めに投げるよう意識しました」。途中降板の悔しさは味わったが、散発3安打で切り抜けた。

 ハーラートップに並んでも「自分で勝った気はしないので満足はしていません」と素っ気なかった。「次は完投、完封か」と聞かれると「そうですね。頑張ります」と即答した。悔しさも糧にする。【古川真弥】