<阪神1ー0ソフトバンク>◇11日◇甲子園

 

 しびれた~。阪神が連敗脱出だ。ハラハラ、ドキドキ、最後まで気の抜けない展開。8回裏、相手エラーで決勝点を奪ったが、勝利を呼び込んだヒーローは文句なし、先発岩田稔投手(28)だ。8回3安打8奪三振で無失点、今季5勝目をマーク。価値ある勝利だ。あっぱれ、岩田!

 もう悪夢を忘れられるだろう…。岩田はまるで子供のように無邪気だった。8回裏、虎の子の1点が入る。一塁ベンチ前のラバーを、これでもかとバンバンたたき、興奮を現した。

 岩田

 あの1点は正直、めちゃくちゃうれしかった!

 序盤から思いきり足を踏み込み内角を突く。2回1死三塁を切り抜け持ち味を発揮した。ムービングボールでゴロを打たせ、宝刀スライダーで空振りを奪い…。8回105球を投げ8奪三振3安打無失点で5勝目。無四球のおまけ付きだ。マートンの暴言騒動があり2連敗中、負ければ今季ワースト借金4を背負う。負のイメージをすべて吹き飛ばす、気合の投球だった。

 岩田

 攻めて攻めて。四球にビビらず、打たれたら仕方ないと思って投げた。

 失うモノは何もない。一時期、そう思えるほど追い込まれた。5月30日ロッテ戦で4回途中6失点。2軍降格の危機に陥り、焦りにも似た感情が湧き出た。同日、オフに自主トレを共にする師匠、巨人杉内がノーヒットノーランを達成。「オレとはレベルが違いすぎて、コメントできる訳ないやん…」。苦悩の最中、文字通り悪夢に襲われた。

 「オマエはもうクビ。お疲れさん!」

 6月上旬、北海道遠征中の夜明け前。グッスリ眠っていたはずが、夢にうなされて跳び起きた。練習中に突然、首脳陣から戦力外通告を受ける-。そんな夢だった。ぼうぜんとした。夢だと理解し、思わずホッとした。「あんな夢を見たのは初めて。怖かった。追い込まれてるんや、と驚いたわ」。それ以来、布団に入れば好調時のフォームを脳裏にイメージし続けた。重心を低く、強く踏み込む-。

 答えにたどり着いた後は5日楽天戦で8回1失点、そしてこの夜と、2連勝で苦悩を糧に変えている。前回登板からイニング間のキャッチボール前、両太ももを伸ばすストレッチで下半身を意識してきた。

 これで今季5勝全てが連敗を止めてのモノだ。「まだまだ続くんで頑張ります」。「連敗ストッパー」という肩書がうれしい。苦しい時、頼られる男になりたいと思っている。【佐井陽介】