<日本ハム2-3ヤクルト>◇17日◇札幌ドーム

 1球に泣いた。日本ハム武田勝投手(33)は今季3度目の完封勝利を目前にしながら、手痛い3敗目を喫した。ヤクルト戦の9回2死一、二塁からバレンティンに逆転の15号3ランを浴び、2点リードを守り切れなかった。これで4勝目を挙げた4月29日の楽天戦以来、7試合連続で勝ち星なし。チームの連勝は2でストップし、貯金は再び1ケタ「9」となった。

 打球の行方を最後まで見ることはできなかった。武田勝が、1発に沈んだ。2-0の9回2死一、二塁。打席に昨季のセ本塁打王、バレンティンを迎えた。2ボール1ストライクからの4球目、120キロのチェンジアップを捉えられた。左翼方向を一瞬振り向き、失望した。逆転の3ラン。両手を膝について、うつむいた。「あの場面で完璧に打ったバレンティンが上。僕自身も、あの球しかないと思って投げた」と素直に負けを認めた。登板7戦ぶりの白星へ、あと1死まで迫っての悲劇。手中にしかけた5勝目が消え、3敗目を喫した。

 快調なペースで長いトンネルを抜けようとしていた。序盤から制球がさえた。捕手大野のミットが、構えた位置からほぼ動かない。直球も変化球も高めに浮くことなく、凡打の山を築いていった。8回まで、わずか3安打。三塁すら踏ませなかった。栗山監督も「素晴らしかった。今日の形であれば、最後までいってくれると信じていった結果」と、今季3度目の完封劇を疑わなかった。

 3、4月の月間MVP左腕も、5月以降は勝利から遠ざかる。それでも調子が悪いとは感じていなかった。「最低限の仕事はクリアできている」。勝ち星は付かなくても、先発の仕事を果たしてきた自負があった。この日もその言葉を証明するような圧巻の内容も、最後に踏ん張れなかった。それでも指揮官は「もう少し点を取れれば。申し訳ない。今日は本当に申し訳ない」と責めることはなかった。

 ただ、衝撃的な敗戦を引きずるわけにはいかない。武田勝の言葉にも力がこもった。「これで終わりじゃない。明日からまた、気持ちを切り替えて、リーグ戦再開までに気持ちを高めていきたい」。チームは今日18日、交流戦最後の試合となるDeNA戦(横浜)に臨む。栗山監督の思いも同じだ。「このままこういう形で終わってはいけない。(日本ハム)らしい形で勝てるよう、全力でやります」。ラストはスッキリ勝って、交流戦を締める。【木下大輔】