ファン投票では初選出だ。プロ野球のマツダオールスターゲーム2012のファン投票最終結果が25日に発表され、パ・リーグ先発投手で日本ハム斎藤佑樹投手(24)が2位に3万2000票以上の大差をつけてトップに立った。「ファン投票で1位に選んでいただき、またひとつ、夢がかなった」。ルーキーイヤーの昨年はプラスワン投票で選ばれ、最後の1枠に滑り込んだが、2度目の今年は胸を張って堂々と夢舞台に立つ。

 会見に臨む佑ちゃんの表情は、誇らしげだった。「去年は出ていいのかなという気持ちがあったけど、今年はそれなりに評価をしてもらって、こういう立場で出られることをうれしく思います」。昨年はファン投票や選手間投票ではなく、プラスワン投票で最後の最後に出場が決まったオールスター。2試合に登板し、計2回2/3を0点に抑えたが、いずれもリリーフでの出場だった。今年は、違う。夢舞台の先発マウンドに立つ資格を得て「またひとつ、夢がかなった」と感激に浸った。

 「抑えることに必死だった去年とは少し違って、今年は試したいこともある」と言う。入団以来、レベルアップを目指して体の使い方など重点的に取り組んできた直球が、どこまで通用するか。「オールスターだから、真っすぐが来るというのは相手打者も頭にあると思うんです。それでも、真っすぐで勝負できるようになりたい。全球とはいかないけど、多めに投げたいですね」。セの名だたる打者たちとの勝負で、これまでの成果を見極める。

 照準は「交流戦でホームランを打たれた打者」に、向けられた。記憶に新しいのが「投げる球がない」と白旗を揚げざるを得なかった13日巨人戦(札幌ドーム)での一撃。長野に狙い通りのコースへ投げたツーシームを、左翼中段へ軽々と運ばれた。パ相手に今季8試合で1本しか許していない本塁打だが、交流戦では5試合で4被弾。データが少ない分、駆け引きよりも、純粋に実力が試される交流戦で受けた屈辱を、忘れるはずがない。顔に似合わず、大の負けず嫌いは「絶対に抑えたい」と再戦を心待ちにしている。

 現在5勝(6敗)はリーグ9位。「勝ち星だけなら、ほかにも勝っている投手はたくさんいる」とファン選出1位に浮かれてはいない。初めて開幕投手を務めた今季は、初の完投勝利に完封勝利と着実にステップを上がってきた。「チームの代表として出るという自覚やプライドを持って、全力で臨みます」。1年前にはなかった、たくましさを身に付けて、球宴の舞台に帰ってくる。【中島宙恵】