3連敗で5位転落。最悪のチーム状態を救えるのは、この右腕しかいない。右膝を痛めて2軍調整中だった阪神藤川球児投手(31)の1軍復帰が決定的となった。4日に鳴尾浜で負傷後初めてシート打撃に登板。打者6人にマウンドから29球を投じ、右膝を最終チェックした。もう待ってはいられない。守護神復帰で流れを変えて、後半戦の大逆襲にかける。

 デッドラインが近づいてきた。悪夢の3連敗で5位転落…。窮地に追い込まれた和田阪神は、藤川の1軍復帰に再浮上の起爆剤を託す。敗戦から9時間前。リリーフエースは、快晴の鳴尾浜で戦列復帰の準備を整えていた。

 まずは26球のブルペン投球。そして向かった先はマウンドだ。右膝を痛めてから初めて打者に対する。先頭俊介には直球でグイグイ押して左翼に柵越えを許したが、その後はツーシームやスライダーなど変化球も駆使。森田にはフォークで空振り三振を奪った。クイック動作も試した。全29球のデモンストレーションを終えスタンバイOKだ。

 急落するチームを引き上げる使命感がある。決戦が近づき、これまでの柔和な笑顔から一転して、この日は厳しい表情を浮かべた。

 藤川

 今日は報告できることはありません。まだ(投げた後、負傷箇所の)反応が出ていないので、何とも…。(復帰は)僕が決めることじゃない。上(首脳陣)が決めること。

 シート打撃のテーマは打者との勝負感覚ではなく、右膝の状態確認だった。軸足をいかに使えるかが最大のポイントだ。球団関係者は「ブルペン投球を重ねるごとに、どんどん良くなってきている」と証言する。今日5日の膝への影響度も考慮するが、権田トレーナーは「登板後の右膝の状態も安定していた」と回復を認めており、1軍への再昇格は目の前だ。

 6月20日に登録を抹消された。当初は「投手陣には『ゆっくり治させてくれ』と言いました」と明かすなど入念に調整する考えを持っていたが、事態が許さない。守護神不在のリーグ戦再開後はチーム状態が急激に悪化。救援陣も崩れがちで負の連鎖を断ち切るためにも、リリーフエースの早期復帰が避けられない状況になった。

 遠征先の松山で報告を受けた山口投手コーチは「膝さえ無意識に投げられたら、という感覚は持っているやろうな」と想定し、和田監督も試合後「球数が増えていくごとに良くなったという報告は聞いた。これから会議がある。そこで話し合ってね」と話した。膝の状態が良好なら、今日5日に東京で合流し、明日6日巨人戦(東京ドーム)から復帰。頼れる守護神が「命綱」として傷ついた虎を支える。【酒井俊作】